【エアレース】
「修業が足りない」。室屋義秀が苦しんだオーストリアの風

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

「コンディションの変化は影響しているが、それをコントロールするのがパイロットの役割。修業が足りなかった」

 室屋が気持ちを切り替えるうえで、大きな助けになったのが、今回の第6戦でエアレース初優勝を果たしたマット・ホールのフライトだった。

第6戦で優勝したマット・ホール(写真右)©red bull第6戦で優勝したマット・ホール(写真右)©red bull ホールは4番ゲートから5番ゲートにかけて、室屋同様、ほぼ水平にターンしていたのだが、ラウンド・オブ・14では5番ゲートでパイロンヒット。すると、続くラウンド・オブ・8以降のフライトでは室屋が選択した以上に大きく上方向へターンするようにライン取りを変えていたのだ。

 ホールはその後、ペナルティを犯すことがなかったばかりか、難しいコンディションのなかでもタイムを縮めていった。室屋は「さすが」とでも言うように、うーん、とうなってからこう語った。

「おそらく上空の気流の状態を把握して、このほうが速いと分かったんだろう。そこでタイムを縮められたから(年間順位トップの)ポール・ボノムにも勝つことができた」

 室屋にとって、エアレースで勝つことの難しさや、この競技が持つ怖さを嫌というほど味わった今回の第6戦。しかし、いつまでも不運を嘆いていては強くなれない。

 自分自身がやるべきことはまだまだ残されている。自然との戦いのなかで、そんなことをあらためて思い知らされたレースでもあった。

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