【エアレース】「修業が足りない」。室屋義秀が苦しんだオーストリアの風 (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 5組目に飛んだ室屋義秀はこう振り返る。

ファンからのサインに応じる室屋義秀©red bullファンからのサインに応じる室屋義秀©red bull
「上空の雲の流れを見ていて、ある程度風が強まることは予想していた。(1組目で飛んだ前年年間総合優勝の)ナイジェル・ラムがスタート時に制限速度を超えて失格になったのも、上空で強い向かい風を受けていたため、スタートゲートを通過しようと高度を落とした瞬間にスピードが上がりすぎたから起きたことだった」

 室屋の予想どおり、上空で吹いていた風は次第に下へ降り、猛烈な強さをともなって吹き荒れた。4組目に飛んだ今季2勝を挙げているハンネス・アルヒもスタートゲートでパイロンヒット(翼がエアゲートに当たること)するという、通常ならありえないミスを犯してしまうほど、レーストラックは厳しい条件下にさらされていた。

「離陸直前に風が強まったが、離陸してから(上空でスタートを待つ間)もさらに強まった」と振り返る室屋は、最悪のタイミングでスタート順を迎えることになった。こうなるとライン取りを変更せざるをえない。

 通常なら「これほど急激にコンディションが変化することはまずないので、レース直前にラインを変えることなどほとんどない」が、変更しなければ「ターンを回り切れず、ゲートを通過できない」というのが室屋の下した結論だった。

 室屋が変更したのは、4番から5番ゲートにかけてのライン取り。今回のレースのキーポイントと見られていた難易度の高い箇所である。

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