【エアレース】
「修業が足りない」。室屋義秀が苦しんだオーストリアの風

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 小型飛行機による空中での激しいタイムレースが繰り広げられる、レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ。屋外で行なわれる競技だけに気象条件による影響は大きく、"自然との戦い"は避けられない。ときにはフライト順によって条件が変化し、有利不利が生じる可能性さえもある。

 雨天で競技が行なわれることのないエアレースの場合、何と言っても厄介なのは風だ。これをいかにコントロールするかが、パイロットの腕の見せどころだと言ってもいい。

エアレースの第6戦はオーストリアのレッドブル・リンクで開催された©red bullエアレースの第6戦はオーストリアのレッドブル・リンクで開催された©red bull では、パイロットはどのように風に対応しているか。飛行機を操縦することのない人にとっては、ボートを漕いで(あるいは、泳いで)、川を渡ることをイメージすると理解しやすいかもしれない。

 たとえば、流れの速い川を最短距離で向こう岸に渡りたいとする。だが、一番近い対岸をまっすぐに目指してしまうと、実際にはかなり川下まで流された位置にたどり着いてしまう。川の流れを風の流れに置き換えれば、空中で起きていることはこれと同じだ。

 つまり、無風状態であれば、ゲートを通過するためにまっすぐ飛べばいいところを、風がある場合には風上方向に機首を向け、風に流されるのを防ぎながら飛ばなければならない。パイロットには風の強さや向きを瞬時に判断し、機体の動きを制御することが求められている。

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