念願のエアレース日本大会で室屋義秀が笑顔。「人生で一番いい日」 (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki photo by Matsuoka Kenzaburo

 日本初開催のエアレースでは、常に多くの報道陣が室屋を取り囲んだ。今までならとてもありえなかった状況にも、苛立ちを見せるどころか、時に笑いを交え、丁寧に対応していた。16日の予選が終わった後の記者会見では、地元開催でフライトした印象を問われ、「スカイツリーも見えた」と笑いを誘ってみせた。

 そんな姿に、痛々しい、は言いすぎだとしても、どこか違和感が拭えなかった。

 室屋の胸の内を推し量るように、現在最強のエアレースパイロット、ポール・ボノム(イギリス)はこんなことを語っている。

日本大会で優勝したのは、ポール・ボノム(イギリス)だった日本大会で優勝したのは、ポール・ボノム(イギリス)だった「ヨシ(室屋)に地の利があると言われるが、千葉のレースは初開催で誰も飛んだことがないのだから条件はみんな同じだ。それでもヨシはメディア、家族、友人などの期待を受けて結果を残さなければならない。実際、私がホテルを出て外を歩いていても声をかけられないが、ヨシは違う。だからと言って、それを無視するのも難しい。ヨシの精神的なプレッシャーは相当大きいだろう」

 ボノムの心配を裏付けるかのように、室屋は16日の予選を9位で終えた。開幕戦の予選3位からは大きな後退である。室屋はあまりに重い荷物を背負わされすぎた。そんなふうに思えた。

 だが、室屋はようやくこぎつけたエアレースの日本初開催の機会――すなわちスカイスポーツの人気拡大や航空文化の啓蒙のチャンス――を無駄にするわけにはいかなかった。

 果たして翌17日、室屋は驚くべきメンタルタフネスを見せつける。

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