念願のエアレース日本大会で室屋義秀が笑顔。
「人生で一番いい日」

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki photo by Matsuoka Kenzaburo

 それが分かっていたからこそ、室屋は努めて明るく、アイコンとしての役割を担ってきた。

記者会見で笑顔を見せる室屋義秀記者会見で笑顔を見せる室屋義秀 本来の室屋は、取材嫌いとまでは行かなくても、積極的に表に出たがるタイプではない。根底にあるのは競技に集中したいというアスリートとしての強い意志だ。およそ6年半前、初めて室屋にインタビューしたとき、こう語っていたのを思い出す。

「パイロットとしては勝つことだけを考えたい。メディアも含めて周りに何もなく、インタビューとかが一切ないのが望ましい。たぶんパイロットは現場に入るとそうなる。競技だけに(集中したい)というのが本音」

 実際、これまでの室屋はレース前になるとどこかピリピリしていることが多かった。口数は少なく、取材を避けるような様子さえあった。

 しかし、今回は違った。室屋はいつになく明るかった。

 室屋はレース前に「優勝を狙う」とか、「表彰台が目標」などと口にすることは絶対にない。常々、「あくまで順位は相対的なものであり、自分たちが持つ100%の力を出すことこそが重要」と考えているからだ。

 地元開催のレースを前にしてもそのスタンスが変わることはなかったが、強気で前向きなコメントが多かったのは確かだ。

 たとえば、「幕張は過去にエアショーで飛んでおり、風の条件が把握できているので有利」だと地の利を強調し、また日本開催のレースへ向けて新型機を導入したことについても、十分な調整期間が得られなかったにもかかわらず、「いい仕上がりで満足している」と語っていた。

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