【エアレース】今季終了。日本人パイロット・室屋義秀が奮闘 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki photo by Redbull

 結局、予選6位のポール・ボノムにタイムで1秒以上も上回られ、無線でタイムを伝え聞いた室屋が「これでは(敗者のうち上位タイムの2名に)残るのは難しいだろう」と覚悟したように、トップ12での敗退が決定。9位という結果で最終戦を終えた。

最終戦の室屋の成績は9位。トップ12で敗退した最終戦の室屋の成績は9位。トップ12で敗退した これにより年間総合順位も9位が確定。室屋にとって3年ぶりのエアレースは、厳しい現実を突きつけられる結果となった。

 それでも室屋は前を向き、「今年初めて表彰台に立ったことで、やれるという手応えもつかめた」と言い、こう続ける。

「機体やチームの体制など、まだまだ万全とは言えず、トップ(レベルのチーム)とは差があることは否めない。でも、徐々に環境は整ってきて、長期的に見れば確実にステップアップしている。来年、再来年に結果を出せるという準備はできてきている」

 初の快挙に歓喜した今シーズンも、終わってみれば年間9位。それでも、来年以降へとつながる手応えを手にできたことは間違いなさそうだ。だからこそ、室屋の表情は思いのほか明るかった。

 侍パイロットとして世界の猛者たちと伍する室屋のさらなる活躍に期待したい。


 さて、話を年間総合優勝争いに移そう。

 今回の最終戦、誰よりも大きな注目を集めたのは、地元オーストリアのハンネス・アルヒである。

 会場に詰めかけた3万5千人のファンから大声援を受け、アルヒは予選で55秒545と2位に1秒近い大差をつける圧巻のフライトを披露した。その後もトップ12を楽々と勝ち上がると、スーパー8(準決勝)もトップのタイムで通過。もはやアルヒの優勝は動かしがたいものに見えた。

 しかも、アルヒは年間総合優勝争いで2位につけており、最終戦で総合トップのナイジェル・ラムが3位以下に終わり、アルヒが優勝すれば、年間総合順位でも逆転するという状況にあった。

 迎えた注目のファイナル4(決勝)。決勝進出者4名のなかで最後に飛ぶアルヒのフライトを前に、ラムの順位は2位。アルヒがトップに立てば、必然的にラムは3位に落ちる。歓喜の瞬間を待ちわびるファンはヒートアップ。劇的な逆転優勝へ舞台は整ったかに見えた。

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