【F1】盛況?ガラガラ?現地発、韓国GPの実態レポート (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki  桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 そもそも、2000年代以降のF1はチケット売上で収益を上げようという興行ではなくなっている。新興国が「国家プロジェクト」として開催するケースが多く、世界へアピールする「広報宣伝費」という名目で予算を投じている。マレーシア、中国、バーレーン、トルコ、アブダビ(UAE)と続いてきた新規開催グランプリは、まさにそのスタイルだ。今後開催を控えているロシアGP、メキシコGPなどもこの路線といえる。

 また、同じく新しいグランプリである韓国GPやインドGPの場合は、対外的なイメージ向上と、サーキット周辺の不動産開発にF1開催を利用しようというのが狙いだ。

 一方、チケット収入に頼る従来のスタイルで開催し続けているヨーロッパのグランプリは、高額なF1開催権料と、開催コストの高騰で採算が取れなくなり、フランスGPなどがカレンダーから脱落していった。そんな中、熱心なファンの来場で開催を支え続けている鈴鹿の日本GPは、シルバーストンのイギリスGP、モンツァのイタリアGPなどと並んで、希有な存在となりつつある。鈴鹿やモンツァ、シルバーストンと同じような観客席の盛り上がりを、開催4年目の韓国GPに求めるのは酷だろう。

■サーキットまでのアクセスとラブホテル問題の真相

 仁川国際空港、またはソウルから、サーキットに近い木浦(モッポ)までは、バスで5、6時間。ソウルから新幹線KTXを使えば3時間半の快適な旅だ(仁川からソウルはクルマで1時間、電車で45分ほど)。フランスのTGVと同じ車両で、乗車券は1等車でも5300円程度だ。

韓国の新幹線、KTXは、フランスのTGVと同じ車両を使用している photo by Yoneya Mineoki韓国の新幹線、KTXは、フランスのTGVと同じ車両を使用している photo by Yoneya Mineoki サーキット付近に電車の駅はないが、そもそも周辺に駅があるサーキットなど世界中に数えるほどしかない。「聖地」と言われるイギリスGPのシルバーストンは駅などない小さな村にあり、観客の多くは最寄り駅のノーザンプトンやミルトンキーンズから1時間近くかけてシャトルバスでやって来るのだ。

 韓国GPの場合、KTXの終点である木浦からサーキットまで無料のシャトルバスが運行されている。タクシーを使ってもサーキットまで30分ほどで片道約1500円。これで「アクセスが悪い」と言うのなら、アクセスのいいサーキットなどほとんどなくなってしまう。

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