マイルCSでナミュールはGI馬になれるか ようやく競走馬としての「旬」を迎えた (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo

 2歳GIの阪神ジュベナイルフィリーズ、3歳クラシック初戦のGI桜花賞と、いずれも1番人気に支持されたように、もともとこの世代の牝馬では、その能力はトップレベルと評価されていた馬である。

 にもかかわらず、冒頭で触れたとおり、GIはこれまでに7戦して0勝。評判どおりの成績を残せていない。

 理由は主にふたつある。

 ひとつは、馬体。桜花賞当時の馬体重が426kgと華奢な馬ゆえ、陣営はレースに向けての調整面において常に苦労を強いられてきた。当初、GI戦線で戦うには、能力の高さに馬体が追いついていない、といった状態だったこともある。

 もうひとつは、レースぶり。スタートが悪く、後手を踏むことが多いため、後方からのレースになることがしばしば。その結果、展開に左右されたり、レース中に不利を受けたりして、能力を発揮できない、ということが頻繁にあった。

 今春に挑んだGI2戦も、GIヴィクトリアマイル(5月14日/東京・芝1600m)が7着、GI安田記念(6月4日/東京・芝1600m)は16着に終わったが、敗因はともにレース中に受けた不利にあった。先の専門紙記者が言う。

「勝負どころで挟まれたり、(馬群から)出られなかったり、前をカットされたりと、2戦とも不利ばかりでまったくレースになっていなかった。だから、この春のGI2戦に関しては、ノーカウントでいいと思います」

 では、千載一遇のチャンスとなるマイルCSでは、これら懸念は解消されるのか。

 まず"道中の不利"という点については、専門紙記者によれば、「その危険度はだいぶ下がると見ていい」と言う。

「舞台となる京都の外回りコースは、概ね最後の直線コースで馬群がバラけます。その分、詰まったり、挟まったり、という危険はかなり回避できると思います」

 後方待機の脚質についても、マイルCSでは過去10年で半数の5頭が道中(3角)10番手以降の追走から、鋭い末脚を繰り出して優勝。名手モレイラ騎手が「すごい」と絶賛した瞬発力を持ってすれば、不安材料にはならないだろう。

 今回、ナミュールにとっては初となる京都コースも、こうしたことから"初"というマイナスより、プラス要素になり得る可能性が高い。

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