世界一のイクイノックスはなぜ凱旋門賞を回避したのか 国内で取りにいく「ロマンより実利」 (2ページ目)

  • 土屋真光●文 text & photo by Tsuchiya Masamitsu

【ジャパンCで報奨金を狙う】

 さらに関係者などへの取材を進めてみると、イクイノックスについては後ろ向きな理由で凱旋門賞を回避したわけではなく、秋の国内出走に前向きなことが理由であることが見えてきた。

凱旋門賞を回避したイクイノックス凱旋門賞を回避したイクイノックスこの記事に関連する写真を見る イクイノックスは9月28日に美浦トレセンに帰厩。GI天皇賞・秋(東京・芝2000m/10月29日)からGIジャパンカップ(東京・芝2400m/11月26日)へと向かうプランがすでに明らかにされている。この2つのうち、よりメインターゲットにしているのはジャパンCとのことだ。その理由は、ドバイシーマクラシックを勝ったことで、報奨金の権利を得たことが挙げられる。

 ジャパンCは、海外の一流馬の参戦を促すため、24ある海外の指定競走を勝った馬がジャパンCに出走する際、着順に応じたインセンティブとして報奨金の交付が設定されている。これは日本調教馬も対象になっており、外国調教馬と額(1着300万ドル、4着以下は20万ドル)は違うものの、イクイノックスが勝てば200万ドル(約3億円)、4着以下でも10万ドル(約1500万円)を、賞金やほかの付加賞とは別に獲得することができる。

 今年から1着賞金が5億円に増額され、さらに約3億円の報奨金。つまり、勝てば合計で約8億円が得られるのだ。クラブ馬という"金融商品"であることを考えれば、利益の最大化として当然の選択だ。

 そして天皇賞・秋を使うことになったのは、宝塚記念(6月25日)の後に以前のような消耗が見られなくなってきたことから、「ジャパンCを大目標に据えつつ、その前後で使えるレースを」という背景があるとのことだ。むしろ完成の域に近づいたことで、「ロマンよりも実利」を取りにいった形だ。バックアップするノーザンファームとしても、闇雲に挑戦するのではなく、より適性を考慮して結果の精度を高めていく、という方向性の表れでもあるのだろう。

 となれば、同じようにノーザンファーム傘下と考えれば、凱旋門賞におけるスルーセブンシーズも適性や能力を見極めた上での参戦であるはず。

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