本命不在の短距離戦線 スプリンターズSで人気のナムラクレアは真の女王になれるか (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Eiichi Yamane/AFLO

 昨年も同じ洋芝の函館でGIII函館スプリントS(芝1200m)を圧勝し、不良馬場だった今年の高松宮記念も2着。キーンランドCが強いワンサイドゲームだったことは認めますが、高い馬場適性がこの馬にプラスに働いたのも事実です。ゆえに、あの勝ち方を額面どおりには受け取れない、ということです」

 加えて、キーンランドCと本番のスプリンターズSとの関連性、という問題もある。過去10年を振り返ってみても、キーンランドCの勝ち馬が直後のスプリンターズSに出走して、勝利した馬は1頭もいない。GIIIに格付けされた2006年以降を見ても、2011年のカレンチャンが1頭いるだけだ。

 また、キーンランドCをステップレースにして直後のスプリンターズSを勝った馬は、過去10年で2014年のスノードラゴン1頭のみ(2019年の勝ち馬タワーオブロンドンはキーンランドC2着のあと、セントウルSにも出走)。同レースにしても、舞台は新潟だった。しかも、キーンランドC8着からの巻き返しである。

 キーンランドCからスプリンターズSまでの中4週という間隔は、GIのステップとしては理想的だが、キーンランドCの舞台となる札幌とスプリンターズSが行なわれる中山とでは、求められるものがそれだけ"違う"ということなのだろう。

 だからといって、ナムラクレアが時計の速い馬場、さらには中山コースが向かない、ということではない。

 年明けのGIIIシルクロードS(1月29日/中京・芝1200m)では、明け4歳の牝馬ながら56.5kgの斤量を背負って、1分7秒3という速い時計をマークして勝利している。中山コースも、昨年のスプリンターズSで3歳牝馬ながら5着と奮闘。直線、伸びないと言われた大外から追い込んで僅差の勝負を演じた。

 要するに、コースや馬場が変わることによって、ナムラクレアのパフォーマンスが落ちる、ということは考えなくてもいいだろう。

 となれば、勝利へのポイントとなるのは、あくまでもライバルたちとの力量比較だけ。

 キーンランドCの負け組のように、馬場や展開などが合わず、ステップレースで力を出しきれなかった実力馬が何頭かいる。そういった馬たちが、あらゆる条件が整ったスプリンターズSでフルに力を発揮した場合、それでもナムラクレアが勝ちきれるかどうか、である。

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