白熱の日本ダービー「打倒ソールオリエンス」が秘かに期待されている馬とは? (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Eiichi Yamane/AFLO

 だとしても、先の専門紙記者が言うとおり、この馬はいまだ未完成。「危なっかしい」一面を残しているのは確か。裏を返せば、他馬にもつけ入る隙が存分にある、ということだ。

 では、二冠を狙うソールオリエンスの前に立ちはだかる存在となるのは、どの馬なのか。

 その候補として真っ先に名前が上がるのは、先にも触れたタスティエーラではないか。先行馬総崩れの皐月賞にあって、4角4番手で2着と健闘した地力は軽視できない。

 ある意味、皐月賞で最も強い競馬をしたのは、この馬と言える。勝ちにいっての2着は"負けて強し"の内容だった。

 しかしながら、この馬にも「不安がある」と専門紙記者は言う。

「東京が舞台のGIII共同通信杯(2月12日/東京・芝1800m)は4着でした。"東京が向いてない"とは言いませんが、皐月賞の好走は"中山向きだった"という可能性もあります」

 次に候補として挙げられるのは、皐月賞で1番人気に推されたファントムシーフ(牡3歳)。同レースでは、レース中に落鉄というアクシンデントがあり、勝負どころで何度か不利があったことを考えれば、3着に入ったことは相当な価値がある。

 東京コースも、共同通信杯を制覇。ダービーでは、よりパフォーマンスを上げてくるとも考えられる。が、今回は鞍上がここ2戦で主戦を務めたクリストフ・ルメール騎手から武豊騎手に替わる。名手から名手へのバトタッチとはいえ、決してプラス要素とは言えない。

 その辺りの事情について、専門紙記者が明かす。

「ルメール騎手は、ファントムシーフとは別の馬に大きな魅力を感じたようです。皐月賞の前から『ダービーではその馬に乗る』と公言していました」

「その馬」というのは、ダービートライアルのGII青葉賞(4月29日/東京・芝2400m)を快勝したスキルヴィング(牡3歳)。昨年のダービー2着で、今や世界レベルの一流馬となったイクイノックスと同じキタサンブラック産駒で、同じく木村哲也厩舎の管理馬である。

 木村厩舎-ルメール騎手という強力ラインのうえ、ルメール騎手が皐月賞3着馬以上に評価しているというのだから、なんとも不気味である。

 競馬サークル内では「ダービーを勝てない青葉賞馬というのが引っかかるし、レースぶりにもダービーを勝つというほどのインパクトがない」といった声もあるが、ソールオリエンスにとって、最大のライバルとなるのはこの馬かもしれない。

 その他、逆転候補として浮上するのは、皐月賞で重馬場と差し・追い込み有利なトラックバイアスによって、本領を発揮できなかった馬たちか。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る