天皇賞・秋に挑む3歳馬3頭の評価はいかに。古馬の壁を打ち破って頂点に立てるほどの存在なのか? (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Kyodo News

 では、3頭それぞれについてはどうか。頂点に立つ可能性が高いのは、どの馬だろうか。

 おそらく人気最上位は、イクイノックス。勝ち負けの可能性においても、この馬が最有力と言えるのではないだろうか。

 強調すべきは、やはりそのポテンシャルの高さである。

 皐月賞、ダービー、両レースでの2着惜敗という実績はもちろんだが、特に2歳秋のGII東京スポーツ杯2歳S(2021年11月20日/東京・芝1800m)以来という、異例の長期休養を経て臨んだクラシック初戦の皐月賞で2着に食い込んだことは、まさにその証。「常識外」と言われながらも勝ち負けを演じられるのは、土台にそれを可能にする能力の裏づけがあってこそ、だ。

 そして、続くダービーでもクビ差の2着。持てる能力がこの世代で一、二を争うものであることを、きっちりと示して見せた。ゆえに、先述の専門紙記者は同馬について高く評価し、こう語る。

「皐月賞も、ダービーも、この馬は不利な大外18番枠からのスタートでした。レースでの惜敗も、展開面で運がなかったから。その意味では、この馬が天皇賞・秋で勝ち負けするのに最も必要なのは、あと少しの"運"と言えるのかもしれません」

 ただ一方で、こういった見方もある。関西の競馬関係者が言う。

「2着は所詮2着。皐月賞も、ダービーも、勝った馬にうまく乗られたことによる惜敗であることは間違いないが、裏を返せば、勝ちきるだけの強さがこの馬にはなかった、ということ」

 そうなると、この秋に悲願の戴冠を果たすには、夏場の休養期間でその不足分を補うだけの成長がもたらされたかどうか。最大のカギはそこにありそうだが、はたして......。

 次に、ジオグリフはどうか。3頭のなかで唯一のGI馬ながら、ダービーでも4番人気にとどまって、以降もその評価はなかなか上がってこない。

 その理由はおそらく、皐月賞を同レースに最も見合った"小器用な競馬"で勝ったと思われているからだろう。しかも、それを証明するかのように、東京コースでのガチンコの力勝負となるダービーでは7着と完敗を喫した。天皇賞・秋でも、3頭のなかでの人気は3番目になるだろう。

 しかしこの馬にも、「もしかしたら......」という買いの材料はあるという。先の専門紙記者がこんな見解を示す。

「ジオグリフが皐月賞を、中山コースの適性の高さで勝った、というのは確かでしょう。おかげで、府中では割引と見られているようですが、それについては"異論あり"です。

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