ウマ娘も競走馬も「かわいい」カレンチャン。類い稀なスピードでロードカナロアと名勝負を繰り広げた (3ページ目)

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Kyodo News

 面白いのが、カレンチャンとロードカナロアは同じ厩舎の所属だったこと。共通のスタッフに手掛けられ、同じ屋根の下で暮らす同僚である。そんな2頭の初対決、軍配はカレンチャンに上がった。2番手で先行したカレンチャンはそのまま押し切り、4番手追走のロードカナロアは3着に沈んだのだった。

 こうして貫禄を見せたカレンチャンだったが、2頭の関係はその後、逆転のときを迎える。同年秋のスプリンターズSである。

 このレースの直前、ともに同じ前哨戦に挑み、ロードカナロア2着、カレンチャン4着と敗戦を喫した2頭だったが、やはりこのGⅠでも1、2番人気を分けあった。今回はカレンチャンが1番人気に支持された。

ゲートが開くと、カレンチャンは5番手、ロードカナロアはそれをマークするように8番手あたりにつける。

 そして前年と同じく、カレンチャンが4コーナーでギアを上げて外から進出。カナロアもそのうしろを追走。直線では2頭の一騎打ちとなった。

 中山競馬場の急坂を使った叩き合いとなったが、軍配はロードカナロアに上がった。力を出し尽くしての戦いは、この時代のスプリント戦における名勝負といえよう。

 このあと、カレンチャンは2度目の香港遠征で7着と敗れ、現役を引退。一方、盟友のロードカナロアは、なんとその香港スプリントを勝利。日本馬初の快挙を達成した。

 さらにその後、同馬は翌年に黄金時代を築き、スプリントからその上のマイルGⅠまで勝利。加えて香港スプリントの連覇を決めるなど、GⅠ6勝の実績を残したのだった。

 ただ、それほどの名馬になっても、カレンチャンとしのぎを削った"カナロア前期"の戦いは忘れられない。

 愛らしく、そして、レースではたくましかったカレンチャン。彼女はいま、母として活躍しており、2016年に生んだカレンモエはスプリント重賞で善戦。なお、父はロードカナロアである。

 かわいさと強さを兼ね備えたスプリンターの物語は、母としてまだ続いている。今度はその子たちに、大きな愛が注がれることを期待したい。

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