スプリンターズSと言えばダイタクヤマト。単勝200倍超えの大激走 (3ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Kyodo News

 さらに、鞍上に江田照男騎手を得た。これも、大きな"風"だった。

 ダイタクヤマトには過去に2度騎乗したことがあったものの、江田騎手はいわゆる主戦ジョッキーではなかった。本来であれば、この馬に唯一のオープン勝ちをもたらした中舘英二騎手や、前々走のGIII函館スプリントS(函館・芝1200m)で2着に導いた芹沢純一騎手のほうが優先されるはずだが、スプリンターズSではふたりとも別の馬に騎乗することになっていた。

 そうして、ダイタクヤマトは"穴男・江田照男"をパートナーとして得た。

 もともと過去2戦の騎乗でも、3着、1着という結果を残していた江田騎手。とにかく彼は、騎乗馬の長所を徹底的に生かそうとする。逃げ馬なら、ダッシュをきかせて思い切り逃がそうとする。極端なことを言えば、最後のゴール前で歩いてしまっても構わないというほど逃がす。

 これが、スプリンターズSの、レース展開にまんまとはまった。

 レースは、中舘騎手騎乗のユーワファルコンが強引に先手を取り、好スタートを切ったダイタクヤマトはその外側にぴったりとつけた。そして、この2頭が後続を引き離していった。

 テンの3ハロン(600m)が33秒0というハイペース。直線に入ってからは、さすがにユーワファルコンの脚色は鈍り出したが、ダイタクヤマトはそれを難なくかわして、そこから"江田マジック"が炸裂した。一気に坂を駆け上がらせると、江田騎手は「ガンバレ、ガンバレ」と馬を叱咤しながら懸命に追いまくった。

 それでも、坂を上がったところではダイタクヤマトの脚も上がり、江田騎手の脳裏にも一瞬「差されるか......」という不安がよぎった。

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