スプリンターズSと言えばダイタクヤマト。単勝200倍超えの大激走 (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Kyodo News

 この豪華メンバーの中では、さすがにダイタクヤマトの存在はかすむ。オープン入りしたとはいえ、重賞は未勝利で、前走のGIIIセントウルS(阪神・芝1200m)でも7着に沈んでいた。勝ち目があるようには、とても見えなかった。

 実際、多くの競馬ファン、関係者もそう思ったのだろう。単勝は257.5倍で、出走16頭中、最低の16番人気だった。

 そうした状況にありながら、実は人知れず、ダイタクヤマトに"風"が吹いていた。

 出走可能頭数が16頭のスプリンターズS。出走条件は収得賞金などの優先順位で決まるが、出馬登録が行なわれた当初、ダイタクヤマトのその順位は19番目だった。つまり、3頭の馬が出走を取り消さなければ、このレースに出ることさえできなかったのだが、きっちり3頭が出走を回避。ギリギリで出走が叶ったのだ。

 ダイタクヤマトへの"風"を感じさせることはまだあった。

 同馬を管理していたのは、石坂正調教師。ジェンティルドンナを育てたことで知られ、今や名調教師のひとりに数えられるが、当時はまだ駆け出しだった。そのため、スプリンターズSと同時期に、比較的楽なメンバー構成で、条件も合っていたオープンレースがあるのを「見落としていた」という。

 もし、この"見落とし"がなければ、好走するチャンスがより大きいオープン戦に回っていた可能性が高く、スプリンターズSの出走はあり得なかっただろう。

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