話題の藤田菜七子ら、JRA新人ジョッキーたちの熱い胸のうち (3ページ目)

  • 土屋真光●文・写真 text & photo by Tsuchiya Masamitsu

 同じく学校生活を1年長く送った森裕太朗は、大腿骨と骨盤などの骨折で離脱を余儀なくされてのものだった。競馬に縁がない家庭に育ちながら、競馬学校入学2年前に乗馬経験を積むために母とともに仙台から栗東に移住したように、気合いの入り方がひと味違う。「一度決めたことは最後までやり抜く性格」と自身の強みを語るように、ケガのリハビリを乗り越え、模擬レースのシリーズチャンピオンの座についた。

 荻野極(きわむ)は幼少の頃から10年を超える空手歴があり、型部門で世界大会に出場した経験を持つ。それでいながら、初めてテレビ画面を通して見た競馬に「ビビッときた」と魅せられて、この道を選んだという。「名前に負けないよう、この道を極めたい」と意気込みを語った。
 
 晴れてデビューを迎える彼らだが、いきなり試練が待ち構える。というのも、中央競馬では外国人騎手やリーディング上位騎手の存在感がより大きくなっており、若手騎手は必ずしも有力とはいえない馬で、彼らを相手に結果を出さねばならないからだ。昨年でも3450余りの中央競馬の全レース中、1割を超えるレース数を外国人騎手が勝利している。今年も2月7日終了時点でリーディング1位はクリストフ・ルメール、2位はミルコ・デムーロ、6位がフランシス・ベリーで、彼らにいきなりデビュー1年目から挑まねばならないのだ。
 
 その一方で、明るい材料がないわけでもない。JRA賞最多勝利新人騎手は30勝を超えることが最低条件となっているが、昨年は鮫島克駿と加藤祥太、一昨年は松若風馬と小崎綾也がそれぞれそのラインをクリアしている。その以前の3年間が「該当者なし」だったことを考えれば、外国人騎手が常にいるような現状でも太刀打ちできるほどに、ルーキーのレベルが底上げされているとも考えられる。
 
 淘汰の厳しいプロのジョッキーとしてどこまで名を残せるか。デビュー戦が待ち遠しい。

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