【競馬】有馬でラストラン。ジャスタウェイが伝説になる

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo

 1年前の同じレースでは6着と掲示板にさえ乗れなかった馬が、単勝2倍に推されていた最強馬ジェンティルドンナをぶっちぎった。厩舎スタッフが思い描いていたあの新馬戦、いやそれ以上の圧勝劇を見事に再現して見せたのだ。

 以来、ジャスタウェイは、馬体がしっかりすればこれほど強くなるのか、というほどの快進撃を披露。前述のドバイデューティフリーを含め、今春のGI安田記念(6月8日/東京・芝1600m)まで破竹の4連勝を飾った。前出の競馬記者が言う。

「天皇賞・秋の前、毎日王冠あたりから(ジャスタウェイが)力をつけたな、という印象はありました。でも、特別な何かがあって、急速に強くなった、というわけじゃありません。あくまでも、厩舎スタッフによる日頃の地道なケアと鍛錬によって、次第に地力がついてきたということです。馬も、人間も、長い間の努力というか、“我慢”が実ったということです。また、3歳の秋から、毎日王冠→天皇賞・秋というローテーションで、古馬の一線級と戦ってきて、ずっと強い相手の中でもまれてきた。それが結果的に、地力強化につながった、という側面もあると思います」

 約1年8カ月の雌伏(しふく)の時を経て、世界トップに立ったジャスタウェイ。今秋は、世界最高峰の舞台・凱旋門賞(8着。10月5日/フランス・芝2400m)に挑戦し、帰国後はジャパンカップ(11月30日/東京・芝2400m)に出走した。

 ジャパンカップでは「調子は決して良くない」と伝えられたが、豪華メンバーがそろう中で、エピファネイア(牡4歳)に続く2着に食い込んだ。もはや万全でなくても無様なレースは見せないという、まさしく「超A級馬」のパフォーマンスを発揮した。

 次は、いよいよラストランとなる有馬記念。ジャスタウェイの勝算について、再度競馬記者が分析する。

「ジャパンカップでも『引退』という話があったくらいですからね。調子は、良くてもジャパンカップ並みでしょう。あれ以上、ということはないと思います。(有馬記念の舞台となる)中山競馬場の、小回りのコース形態も、2500mという距離も、ジャスタウェイにとっては、プラスとは言えないでしょう。そうは言っても、ジャパンカップであのすごいメンバーを相手に2着に食い込むほどの底力を持っているのが、ジャスタウェイ。最後にもう一度、“ミラクル”を起こしてもおかしくないと思いますよ」

 今やもう、歴史的な「名馬」であることは間違いない。だが、もしも有終の美を飾ることができたなら、そのときジャスタウェイは、「レジェンド」となる。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る