【競馬】外国人牧場長が激白。目指すは「タービー3勝」

  • 河合力●文 text&photo by Kawai Chikara

 では、その成功ラインへと達するために、パカパカファームではこれから何をしていくべきか。すでにスウィーニィ氏の頭の中には、牧場をさらに発展させるためのプランがいくつか描かれていた。そのひとつが、生産規模の拡大だ。

「パカパカファームは、これまで年間20頭ほどの生産規模でした。でも、来年は頭数を増やして、29頭の仔馬が生まれる予定です。頭数を増やした理由はさまざまですが、まずは日本の景気が少し良くなったことが挙げられます。JRAの馬主登録申請も、それなりに増えたようですしね。それに、日本は今後、2019年にラグビーのW杯、2020年には東京オリンピック・パラリンピックが控えていますから、しばらくは景気が落ち込まないはず。そうした状況にあって、パカパカファーム自体の評価も少しは上がっていますから、頭数を増やすにはちょうどいいタイミングだと思いました」

 近年における競走馬のセリ市を見ても、景気の良さは如実に表れている。例えば、日本最大の競走馬のセリ市「セレクトセール」(例年7月に北海道苫小牧市のノーザンホースパークで開催)では今年、過去最高の落札額となる125億7505万円を計上。レコードとなった昨年の落札総額(117億6470万円)を大幅に上回った。

 また、毎年パカパカファームから多くの仔馬が上場される「サマーセール」(例年8月に北海道新ひだか町で開催)でも、今年の売却率(上場頭数のうち売却された頭数の割合)は、61.3%と過去最高だった。5年前の2009年が36.8%だったことを考えると、飛躍的に伸びていることがわかる。売却率と同様に、セール全体の総売上額も上昇。こちらも、今年は過去最高の28億5760万円を記録した。こうした状況も鑑(かんが)みて、スウィーニィ氏は「頭数を増やすにはいい時期」だと考えたという。

 景気の良さと牧場の知名度が向上したことによる、生産規模の拡大。それに合わせてスウィーニィ氏は、着々と新たな繁殖牝馬を購入している。そして、この繁殖牝馬選びも、これまで以上に長期的な視点で行なうようになったようだ。

「パカパカファームが出来たばかりの頃は、すでに産駒が日本で活躍している繁殖牝馬を、世界中探し回って購入してきました。ブラックホーク(1999年スプリンターズSと2001年安田記念を優勝)の母であるシルバーレーンや、メイショウドトウ(2001年宝塚記念を優勝)の母プリンセスリーマが、その例です。でもこれらの繁殖牝馬は、実績はあるものの、購入時には高齢で、2、3年しか出産できないリスクがありました。そこで今は、まだ繁殖牝馬としての実績がなくても、産駒の活躍が見込める血統であることを前提に、10年は活躍できる若い母馬を探しています。若い母馬のほうが、私たちも長いスパンで配合や仔馬の育て方を考えていけますから」

 繁殖牝馬は、一般的に若いほうが金額は高くなる。その分、お金もかかってしまうが、スウィーニィ氏は、「ダービーを勝って、その後も活躍馬が出てくれたおかげで、昔よりは多少お金があります(笑)。ですから、今のうちに若い牝馬を買っておくんです」と語った。

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