【競馬】天皇賞、3歳馬イスラボニータは歴戦の古馬に勝てるか? (3ページ目)

  • 土屋真光●取材・文 text by Tsuchiya Masamitsu
  • photo by Nikkan sports

 ただ一方で、今年の3歳馬自体のレベルに疑問符を投げかける声もある。

「今年の3歳の牡馬、特に春からの既存勢力はそれほど高いレベルではないのかもしれません。ダービー馬ワンアンドオンリーも神戸新聞杯は辛勝しましたが、菊花賞はあの内容の9着。トーセンスターダムは8着、トゥザワールドに至っては16着でした」

 そう語るのはスポーツ報知の美浦担当の牧野博光記者だ。

「イスラボニータは確かに今の3歳牡馬の中では抜けて強いと思いますけど、じゃあこのメンバーの古馬に入ってどうか? という不安はあります。2歳時の新潟2歳ステークスでイスラボニータはハープスターにあっさり差し切られました。当時のハープスター自体が絶好調というわけではなかったと聞いています。それを考えると、ヘタをすれば、今年は3歳ではハープスターが一番上かもしれません。実際に古馬相手のGII札幌記念(8月24日/札幌・芝2000メートル)を圧勝していますしね」

 今年の3歳で、現時点で古馬相手に芝1600メートル以上でオープン特別ないし重賞を勝っているのは、前出のハープスター、GIII富士ステークス(10月25日/東京・芝1600メートル)のステファノス、アイルランドトロフィー(10月19日/東京・芝2000メートル)のエイシンヒカリの3頭のみ。2着まで対象を拡げてもポートアイランドステークス(10月5日/阪神・芝1600メートル)のアズマシャトルぐらいだ。

 例えば、フェノーメノが2着になった12年は、重賞だけでもGIIIクイーンS(札幌・芝1800メートル牝馬限定)をアイムユアーズ、GIII京成杯オータムハンデ(中山・芝1600メートル)をレオアクティブ、GII毎日王冠(東京・芝1800メートル)をカレンブラックヒル、GIII富士ステークスをクラレントがそれぞれ3歳で制しており、毎日王冠と富士ステークスは2着馬も3歳馬で、古馬相手に好走している。

「もうひとつ、今日の追い切りで確かに時計は出ていますけど、動き自体はそれほど素晴らしいとは思えませんでした。先行したトウカイチャームも、いっぱいいっぱいに追って抵抗していたのではなく、敢えてイスラボニータに抜かさせるような動きに見えました。

 何より、イスラボニータの主戦だった蛯名正義騎手が今回はフェノーメノに騎乗。知り尽くしているだけに、うまく良さを出させないようにしてくると思いますよ」(牧野氏)

 さらに木曜日に発表された枠順でも、イスラボニータは15番枠と試練を突きつけられた。東京2000メートルで外枠は不利とされており、多頭数になりやすいこのレースではそれが顕著で、15番よりも外の枠は、過去10年では勝ち馬はおろか2着馬も出ておらず、06年のアドマイヤムーン(15番枠)が3着になった程度。好走歴は03年に18番枠から勝ったシンボリクリスエスまで遡(さかのぼ)る必要がある。

 相反するデータを背景に楯獲りに挑むイスラボニータ。勝利の女神はどちらのデータに微笑むか。

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