【競馬】ジャスタウェイの再現狙う、3頭のディープ産駒 (2ページ目)

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Nikkan sports

 さらには、2009年の勝ち馬カンパニー(牡、当時8歳)も忘れてはならない。こちらも、それまではGIレースでは3着が精一杯の"脇役"的な存在だった。しかし前哨戦のGII毎日王冠(東京・芝1800m)を制すと、その勢いのまま天皇賞・秋も完勝。続く、GIマイルCS(京都・芝1600m)も勝利して、驚異的な成長力を見せた。

 これら以外にも、2005年のヘヴンリーロマンス(牝、当時5歳)や、1998年のオフサイドトラップ(牡、当時8歳)、1995年のサクラチトセオー(牡、当時6歳)に、1994年のネーハイシーザー(牡、当時5歳)など、天皇賞・秋で初めてGI制覇を果たした馬は多い。

 特筆すべきは、これらの馬すべてが4歳以上の「古馬」ということ。キャリアが浅く、まだまだ伸びしろがある3歳馬ならば、この舞台で躍進してGI初勝利を遂げても何ら不思議ではない。2002年に勝ったシンボリクリスエスなどは、そのケースだ。しかし、古馬によるGI初制覇がこれほど起きているのは、看過できない事項と言える。

 理由はさまざま考えられるが、そのひとつに挙げられるのは、臨戦過程。近年、天皇賞・秋に挑む実績馬たちは、夏の休養から「ぶっつけ本番」という形で参戦することが多い。一方で、同舞台で初のGI勝ちを決めた馬のほとんどは、夏のレースや前哨戦を使って、そこである程度の結果を残して本番に向かっている。その臨戦過程の差が、逆転の一因になっているのかもしれない。

 そして今年も、有力視されているGI馬たちの多くは、数カ月の休み明けで臨んでくる。だとすれば、GIタイトルのない古馬にもチャンスがあるのではないか。直近の前哨戦、あるいは夏場のレースでそれなりに成長した姿を見せてきた馬なら、その勢いに乗って逆転できる可能性もあるはずだ。

 そこで着目したいのが、マーティンボロ(牡5歳)、ディサイファ(牡5歳)、スピルバーグ(牡5歳)という、ディープインパクト産駒の3頭。いずれもデビュー当時から「能力が高い」と言われてきた馬たちで、本格化の兆しを見せつつある。実際、マーティンボロとディサイファは、今年初めて重賞タイトルを獲得し、勢いも十分だ。

 とりわけマーティンボロは、春シーズンの出産が一般的な日本において、8月20日に誕生した極端な"遅生まれ"。これは、生産牧場の実験的な試みによるものだが、生まれが遅い分、5歳になっても成長の余地がある。昨年のジャスタウェイ同様、レース後に勢力図を一変させてもおかしくない。

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