【競馬】生産者を落胆させたディープブリランテの「意外な姿」

  • 河合力●文 text&photo by Kawai Chikara

 一方、パカパカファームの代表であるハリー・スウィーニィ氏は、共同通信杯が開催されるこの日、東京競馬場へと足を運んでいた。重賞レースとなれば、レース後の表彰式には生産者も出席するのが通例。東京スポーツ杯2歳Sの際には諸事情で行けなかったこともあり、「やっと競馬場でディープブリランテを見られるということで、レースがとても楽しみでした」と、当時を振り返る。

 パカパカファームのスタッフたちが、大きな期待を胸に見守ったディープブリランテの3戦目。しかし、レースは予想外の展開で幕を開けた。これまでは逃げ馬の後ろでレースを進めていたディープブリランテが、スタートから押し出されるように先頭へ立ったのだ。3戦目で初めて"逃げ"の形となったのである。

 それでも、ディープブリランテが作った前半の流れはスローペース。今までに見せた能力をもってすれば、押し切れるとも考えられた。だが、同馬は残り100m地点でゴールドシップにとらえられて2着。生まれて初めての敗戦となってしまった。

「スタート直後、先頭に立ったときは驚きましたが、でも他に逃げる馬がいなかったので『仕方がないかな』という感じでした。負けたけど『こういうこともある』と思い、そこまでショックは受けませんでしたよ。ただ、先頭に立ったあとも、ずっとリラックスできていなかったことは少し気になりました」(スウィーニィ氏)
 
 この敗戦を受けても、「決してダービーへの望みは捨てなかった」というスウィーニィ氏。対して伊藤氏は、レース後に大きな驚きを感じたという。

「押し出されて逃げたのは仕方ないと思ったのですが、そのあと先頭に立ってもずっと引っ掛かっていたのには、正直ビックリしました。とにかく牧場時代はおとなしい馬で、同世代の中でも特におっとりしていましたから。『あの馬が引っ掛かるなんて......』という気持ちでしたね」

 共同通信杯で露呈した、ディープブリランテの引っ掛かる気性。その課題は、次走のGⅡスプリングS(2012年3月18日/中山・芝1800m)でも解消されることはなかった。

 スプリングSでは、逃げずに4番手を進んだディープブリランテ。しかし、スタートしてからしばらくは盛んに頭を上げ、"前に行きたがる"素振りを見せた。鞍上の岩田康誠騎手が、立ち上がり気味になって抑えるほどの状態となったのである。その後、何とか我慢させながら、直線入り口で先頭に立って押し切りを狙ったが、スムーズに運んだグランデッツァにゴール手前でかわされて2着。連勝から一転して、連敗を喫してしまった。

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