【競馬】生産者を落胆させたディープブリランテの「意外な姿」

  • 河合力●文 text&photo by Kawai Chikara

『パカパカファーム』成功の舞台裏
連載●第32回

デビューから2連勝で一躍クラシックの最有力候補となったディープブリランテ。2戦目のあと、少しの休養を挟んだ同馬は、復帰戦に「クラシック登竜門」と言われる共同通信杯を選んだ。パカパカファームの面々も大きな期待を寄せた3戦目。はたしてディープブリランテはどんなレースを見せたのか――。

人が近づいてもおとなしいパカパカファームの仔馬たち。ディープブリランテもかつてはそうだった。人が近づいてもおとなしいパカパカファームの仔馬たち。ディープブリランテもかつてはそうだった。 デビュー戦(2011年10月1日/阪神・芝1800m)を5馬身差、続くGIIIの東京スポーツ杯2歳S(11月19日/東京・芝1800m)を3馬身差と、そのスケールの大きさを存分に見せて2連勝を飾ったディープブリランテ。同馬はその後、年末に行なわれるGIIIのラジオNIKKEI杯2歳S(12月24日/阪神・芝2000m)への出走が検討された。しかし陣営は、疲れなどを考慮して同レースを回避。しばしの休養を取ることとなった。

 ディープブリランテが再び戦列に復帰したのは、翌年の2月。GIIIの共同通信杯(2012年2月12日/東京・芝1800m)だった。かつて、ナリタブライアンやジャングルポケットなどのクラシックホースが勝ってきた伝統のレースである。

 過去2走で見せた高いポテンシャル。さらに、舞台も前走と同じ東京競馬場の芝1800mとなれば、ディープブリランテの勝利を疑う余地はなかった。直前の単勝オッズは1.4倍。のちに皐月賞と菊花賞の二冠を制す同世代のライバル、ゴールドシップを押し退けて、断然の1番人気となった。

 共同通信杯が行なわれる2月は、サラブレッドにとって出産シーズン。ディープブリランテの"故郷"であるパカパカファームでも、スタッフは日々、繁殖牝馬の出産に備えていた。同牧場のフォーリングマネージャー(生産担当)である伊藤貴弘氏は、この時期、深夜の出産に備えて夜間勤務に従事していた。

「毎年1月末から5月末くらいまでの出産シーズンは、夜間勤務になるので、基本的に日中は寝ています。でも、ディープブリランテが(レースに)出るときは起きて、リアルタイムで見ていました。レース前にタイマーが鳴るようセットしておいて、テレビで観戦していましたね」

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