【競馬】牧場長に高いワインを2本も空けさせた「衝撃のレース」 (2ページ目)

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • 日刊スポーツ●写真 photo by Nikkan sports

デビュー2戦目の東京スポーツ杯2歳Sを圧勝したディープブリランテ。デビュー2戦目の東京スポーツ杯2歳Sを圧勝したディープブリランテ。 しかし、ディープブリランテはそんな不安をあっさりとはね退けてしまった。それどころか、想像を上回るポテンシャルを見せつけた。

 大雨の中、ゲートが開くと、ディープブリランテはデビュー戦とは見違えるような好スタートを切った。そのまま2番手につけた同馬は、わずかに力みながらも、終始2番手をキープして、極めてスムーズなレース運びを見せた。

 驚異的だったのは、直線に入ってからだ。最終コーナー出口付近で早くも先頭に並びかけると、ほとんど仕掛けることなく後続を突き離した。ジャスタウェイやクラレントなど有力馬が泥んこ馬場にもがく中、ディープブリランテは悠々と直線の坂を駆け上がっていったのだ。

 岩田騎手が鞭(ムチ)を入れたのは、2、3度だけ。懸念していた不良馬場を問題にせず、ほとんど馬なりの競馬で2着に3馬身の差をつけてしまった。この時点で、ディープブリランテは紛れもない「ダービーの最有力候補」となったのだった。

 レースをテレビで観戦していた伊藤氏は、ゴールの瞬間、喜びとはまた違う感情が湧いてきたという。

「ディープブリランテが勝った瞬間は、不思議な感じでした。一気に遠い存在になってしまったというか......、自分が手がけた馬とは思えませんでした。とにかく『すごいことになった』と感じたのを覚えています。あとは、『これでまた社長が調子に乗るな』とも思いましたね(笑)」(伊藤氏)

 その「社長」こと、パカパカファーム代表のハリー・スウィーニィ氏はこのとき、実は「レースを見ていなかった」という。本来スウィーニィ氏は、生産馬が重賞に、それも有力候補であれば、レースの際は間違いなく競馬場に足を運んでいた。しかしこの日は、競馬場に行かなかっただけでなく、テレビさえも見ていなかったという。

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