【競馬】ディープブリランテが生後2カ月で上場された理由

  • 河合力●文 text&photo by Kawai Chikara

「まず、何より素晴らしい馬だということ。だからこそ、より早くセールで見せるべきなのではないかと思いました。普通なら5月生まれの馬は出しません。4月生まれでも上場しないことがあります。ただ、ディープブリランテはあまりに馬体が良かった。これなら“遅生まれ”でも評価されるかもしれない。そう考えるうちに、上場に気持ちが傾いていきました」

 スウィーニィ氏がそこまで考えるほど、ディープブリランテの出来が良かったということだろう。またそれ以外にも、当歳で上場する理由はあった。伊藤氏が付け加える。

「その後の馬の成長を考えると、早めにセリに出したほうがいいケースがあります。例えば、当歳のセリ市で落札された馬は、それ以降、さらに放牧時間を長くするなど、『強くするための馬づくり』に時間が割けます。反対に、1歳で上場する馬は、どうしてもセリ市に向けた準備に時間を費やさなければなりません。その辺りも考えたのだと思います」

 こうしてディープブリランテは、生まれてから約2カ月後に、国内最大級のセリ市「セレクトセール」に登場することとなる。カタログに掲載されたディープブリランテの写真は、撮影日付が5月12日。締め切り間際に撮った写真だった。

 ただしスウィーニィ氏は、ディープブリランテの「遅生まれのハンデ」をカバーするためのアイデアも練っていた。そして、それが見事な成果をもたらすことになる。次回は、そのエピソードを紹介する。

(つづく)

  ハリー・スウィーニィ

1961年、アイルランド生まれ。獣医師としてヨーロッパの牧場や厩舎で働くと、1990年に来日。『大樹ファーム』の場長、『待兼牧場』の総支配人を歴任。その後、2001年に『パカパカファーム』を設立。2012年には生産馬のディープブリランテが日本ダービーを制した。
『パカパカファーム』facebook>

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