【競馬】天皇賞・秋、本命ジェンティルドンナの意外な「敵」

ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

 10月27日に開催されるGIは、天皇賞・秋(東京・芝2000m)です。このあと、ジャパンC(11月24日/東京・芝2400m)、有馬記念(12月22日/中山・芝2500m)と続く、秋の古馬三冠レースの第1弾として、すっかり定着しましたね。

 僕がデビューした当時、1980年代の前半までは、天皇賞・秋も天皇賞・春(京都・芝3200m)と同様、3200mの距離で行なわれていました。淀(京都競馬場)の3200mもタフなコースですが、府中(東京競馬場)の2マイル(3200m)は、それ以上にハードなものだったんですよ。

 その後、1984年に天皇賞・秋の距離が2000mに変更されました。それからは、それまでのスタミナ勝負とは違って、ある程度スピードが要求されるようになり、安田記念などマイル(1600m)路線で活躍してきた馬が勝つことも多くなりました。

 だからといって、スピードだけで押し切れるほど、府中の2000mは甘くありません。スピードに、プラスアルファーが必要とされます。距離が短くなっても、タフで、ハードな舞台であることは変わらないのです。

 そんな天皇賞・秋の今年の注目馬といえば、やはりジェンティルドンナ(牝4歳)でしょう。

 昨年は牝馬三冠(桜花賞、オークス、秋華賞)を制しただけでなく、3歳牝馬の身ながら、果敢にジャパンCに挑戦。オルフェーヴル(牡5歳。当時4歳)をはじめ、古馬トップクラスを撃破しました。3歳牝馬が古馬の、それも超一線級に挑んで勝利するということは、並大抵のことではありません。

 しかも、そのレース内容が圧巻でした。同レースではジェンティルドンナの直線の進路の取り方が物議を醸して(直線で内のジェンティルドンナが斜行してオルフェーヴルの進路を妨害したというもの)、そのことばかりが話題を集めましたが、実はとても考えられないようなレースでジェンティルドンナは勝ったのです。外枠(17頭立て8枠15番)でスタートしながら、1コーナーまでの間に最内へ切れ込んで、絶好の位置で折り合うという素晴らしいレースぶりでした。普通なら引っかかっておかしくない手引きでしたが、センスの良さというか、どんなレースの形にも対応できてしまう、この馬の従順さに本当に驚かされました。オルフェーヴルを負かしたから言うのではなく、このレースぶりだけでも記憶に残るジャパンCでしたね。

 ジェンティルドンナは今年、春はドバイ遠征(ドバイシーマクラシック2着。3月30日/UAE・芝2410m)を実施して、宝塚記念(3着。6月23日/阪神・芝2200m)に出走しました。2戦とも結果は出ませんでしたが、海外遠征というものは、想像以上に調整が難しいものです。さらに、日本に戻ってきてからのケアも大変です。当初予定していた凱旋門賞(10月6日/フランス・芝2400m)への参戦をパスしたのも、そんな海外遠征の反動が少なからずあったからだと思います。

 しかしこの秋は、放牧から早めに帰厩して順調そうです。府中の芝2000mというタフなコースで、強いジェンティルドンナの姿を改めて見せてほしいものです。

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