【競馬】凱旋門賞惜敗。オルフェ&キズナが痛感した「世界の壁」の正体 (2ページ目)

  • 土屋真光●文 text&photo by Tsuchiya Masamitsu

 一方のキズナも、本番に向けての順調度ではオルフェーヴルに負けていなかった。

 前哨戦のニエル賞(現地9月15日/フランス・ロンシャン/芝2400m)では、佐々木晶三調教師がキズナの状態に物足りなさを認めながらも、ヨーロッパの同世代の強豪を一蹴。その後は、佐々木調教師が「思惑以上に順調過ぎて、不安な点は何もない」と断言するほど、万全のコンディションだった。

 迎えた本番。後方から数えて2番手に位置し、オルフェーヴルとトレヴを見ながらレースを進めた。勝負どころに差しかかると、トレヴを追いかけるように進出を開始。オルフェーヴルに対して外からかぶせるように仕掛け、同馬に抜け出す隙を与えず、真っ向から勝ちにいってみせた。

「オルフェーヴルに並んだときは勝てると思った」

 しかし佐々木調教師のその手応えは、トレヴの前に打ち砕かれて、キズナは4着に終わった。

 オルフェーヴルにしろ、キズナにしろ、状態もレース内容も完璧だったが、相手が強過ぎた。2頭の日本馬の調教師からは、改めて凱旋門賞という壁の厚さへの言葉が漏れた。

「完敗です。スミヨン騎手も完璧に乗って、オルフェーヴルの力は出し切ったと思います。それでも負けたので、勝った馬が強かったとしか言いようがありません」(池江調教師)

「今できることをやった満足感と、(勝者だけが乗ることのできる)馬車に乗ることができない残念な気持ちと半々です」(佐々木調教師)

 勝ったトレヴとは何が違ったのだろうか。

 鞍上のティエリ・ジャルネ騎手は3回目、管理するクリケット・ヘッド=マレック調教師は2回目と、それぞれ「凱旋門賞で勝つこと」を知っていた。ただし、彼らにも「初めて」はあったはずである。それがすべて、とは言えないだろう。

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