【競馬】競走馬が必ず走る、鉄板の「エサ」は存在するのか

  • text by Sportiva

――その「クレアチン」というのは、実際に効果があったのですか。

秋山 私も使ったことがありますが、効果はなかったですね。逆に、馬の毛ヅヤが悪くなってしまうことがありました。人間には効いたのでしょうが、馬の生理には合わなかったんでしょうね。そうした例は、たくさんありましたよ(笑)。本当に笑い話ではないのですが、ひと昔前は飼料の業者の方が「これは効果があります」と言って、いろいろなモノを持ってきていましたから。その中から、私も「サルノコシカケ」とか「高麗人参」とか、人間の体にいいとされる、キノコや薬草の類いのものもいろいろと飼料の中に混ぜて与えてみましたけど、ほとんど効果はなかったですね(笑)。

――何か効果があるものが見つかるといいですね。

秋山 唯一、サケの白子から作られる「核酸(かくさん)」という栄養素は、すごかったですよ。効果テキメンでした。どの馬も元気になり過ぎていましたから。ただ、一頭あたりの1カ月の餌代が、通常よりウン万円も高くなってしまうのが、ネックでしたね。

――その「核酸」は、今でも飼料として与えているのですか。

秋山「核酸」を与えていた当時は、世の中も、競馬界もバブルのような時代でした。それで、馬主も了承してくれていましたが、決して安いものではないですから、今はそう簡単には与えられないと思いますよ。馬主さんも、安くていいモノを求めるようになってきていますしね。それに、馬は「核酸」を食べて元気は出ますけど、レースの成績に必ず直結するわけではないので、今では餌として使っている厩舎は少ないのではないでしょうか。結局、高い餌を食べているから"走る"ということはないんです。食べるモノが、その馬に合うかどうか。

 そうは言っても、何も考えず、業者が持ってくる安い餌をただ与えているだけでは、馬は走りません。馬に"合うモノ"を見つけるための労力を惜しまない調教師が管理していて、餌にもお金をかけることができる馬主さんの馬のほうが、"走る"ことは間違いないでしょう。競馬ファンにしてみれば、それを見極められればいいのでしょうが、そういう情報はなかなか表には出できません。それは、ちょっと口惜しいところですね。ともあれ、競馬関係者の誰もが、これからも試行錯誤を繰り返していくことが大切だと思います。
(つづく)

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