【競馬】キズナがダービーで「本命」と言われるワケ (3ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Nikkan sports

 クラシック戦線において、キズナの株を急落させたはずの弥生賞。しかし、トップジョッキーに言わせると、「最も強い競馬をした」のが、実はそのキズナだったというのだ。

 さらに、彼はこう続けた。
「皐月賞は、この段階で(キズナが)まだ出られるかどうかわからないので何とも言えないけど、ダービーではライバルとして最も怖い存在は、キズナです」

 弥生賞の敗戦後、キズナは目標をダービー一本に絞った。戦法は、最後方待機から、直線での末脚勝負に徹するようになった。結果、毎日杯(3月23日/阪神・芝1800m)、京都新聞杯(5月4日/京都・芝2200m)と、重賞で2連勝を飾った。

 とりわけ目を見張ったのが、前走の京都新聞杯だった。出遅れたうえに、4コーナーでも大外を回るというロスの多い競馬をしながら、最後の直線だけで前を行く14頭の馬たちを並ぶ間もなく抜き去ってしまったのだ。それはまさに、「飛んだ」と言われる、父ディープインパクトを彷彿とさせるような末脚だった。

 キズナの株は、再び急上昇。ダービーが目前に迫った今では、あちらこちらで「ダービーに最も近い馬」と言われ、皐月賞上位組を上回る評価まで得ている。

 トップジョッキーの言葉は本当だった。当時、ダービーの出走権さえ手にしていなかったにもかかわらず、「(ダービーで)ライバルとして最も怖い存在」という評価を裏付けるかのように、キズナは急速な進化を遂げたのだ。まるでこうなることを予見していた「プロの眼」に改めて驚かされるとともに、「プロの眼」にかなうだけの強さを秘めるキズナの底力に度肝を抜かれた。

 ライバル馬の騎手をも唸らせた、豪快な末脚を持つキズナ。競馬界最高峰の舞台となるダービーで、父と同じように“飛ぶ”ことができるのか、注目したい。

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