【競馬】キズナがダービーで「本命」と言われるワケ

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Nikkan sports

皐月賞の上位組を差し置いて、ダービーの本命候補に挙げられているキズナ。皐月賞の上位組を差し置いて、ダービーの本命候補に挙げられているキズナ。東京優駿「3強物語」(2)
キズナ編

 どんな仕事のジャンルにも「プロの眼」と言われるものがある。

 それは、本物とそうでないものを厳しく見分ける眼力と言っていいだろう。競馬でも、その「プロの眼」の存在を強く感じることがある。特に、馬と直に接する騎手が発する言葉の中に多い。

 見た目にどれほど強い勝ち方をした馬でも、鞍上の騎手が「大したことない」とこっそり呟(つぶや)くと、その後はまったく勝てなかったり、デビュー戦などで評判馬を負かした馬であっても、ジョッキーが「あっちの(評判馬の)ほうが強い」と言うと、実際に負かした馬は1勝馬止まりで、負かされた評判馬のほうがどんどん出世したりすることがある。あるいは、成績が下級条件で頭打ちの馬なのに、騎手が「いずれ大きなところを勝てる」と断言すると、その言葉どおり、何カ月後かにGI馬にまで出世するということもある。

 すべてがそうとは言わないが、騎手、それも一流馬の騎乗経験が多いトップレベルの騎手の言葉には、のちに「さすがプロ」と感心したり、驚嘆させられたりすることが少なくない。

 5月26日に開催される日本ダービー(東京・芝2400m)で、最有力候補の呼び声が高いキズナにも、その「プロの眼」にまつわる、ちょっとしたエピソードがある。

 キズナは、ここまで6戦4勝。昨年10月、京都の芝1800mのデビュー戦を勝ったあと、同じ条件で行なわれた500万下特別の黄菊賞(11月11日)を勝って、一躍「クラシック候補」と言われるようになった。

 デビューから2戦2勝はエリートの証しだが、その価値をより高めたのは、初戦でリジェネレーション、2戦目でトーセンパワフルと、ぞれぞれのレースで評判馬に快勝したからだった。しかも、ただ勝つだけでなく、その2頭の評判馬に、2馬身、2馬身半という決定的な差をつけて蹴散らしたのだ。

 血統的にも、父がディープインパクトで、半姉に桜花賞などGIを3勝したファレノプシスがいる超良血。その確かな血統背景にも後押しされて、キズナの評判は一気に上がった。

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