渋野日向子は不振状態から脱出できたのか? スイング改造の現状を分析する (2ページ目)
渋野が取り組んできたスイング改造は、トップで左手がフラットの位置で掌屈(手のひら側に折れる)。切り返しでフェースを閉じた状態(シャットフェース)で、コンパクトにスイングするというもの。これで、飛んで曲がらないスイングを目指してきた。
しかし、なかなか結果が出ないまま、今季からはプロ入り前から渋野を見てきた青木翔コーチと再びタッグを組んで、新たなスイング改造に取り組んできた。そうして、先のスコットランド女子オープンでは復調気配を見せたが、これまでとは何が変わったのだろうか。その点について、大本氏はこう語る。
「(スイング改造に取りかかってからの)以前のスイングでは、ダウンスイングでシャロウ(緩やかな軌道)に入ってきたクラブの軌道を、フォローでは縦方向に抜いていくのが目立ちしました。おそらくこれは、球が引っかかるのを嫌って、フォローで縦方向に抜く動きにつながっていたのだと思います。
フォローを大きく縦に抜くのは、選手としてはいい感覚なのだと思います。ただ、縦に抜けるというのは、クラブの構造的にはフェースが開きやすくなるので、球が右に出やすくなるというデメリットがありますし、それを嫌がることによって、左へフック系の球が出るということもあります。要するに、出球にバラツキが出るということです。
そこから、スコットランド女子オープンでは多少変化が見られました。
アプローチショットのクラブの動きは、ダウンスイングでシャロウに入ってきたものが、フォローでもシャロウに抜けていましたね。いくつかミスもありましたが、ほぼ安定したショットが打てていたと思います。それはつまり、ダウンスイングとフォロースイングの軌道がそろっていた、ということです。
ただ、フルショットではまだ、フォローサイドは縦に抜けていました。それでも、渋野プロは感覚的には"天才"なので、それなりに高いパフォーマンスを出せると思いますが、ショットの安定が4日間持つかどうかがポイントになるとは思います。
アプローチのような感覚でフルショットも振っていけたら、先週よりもさらに上の位置でのフィニッシュも期待できると思います」
いよいよ迎える全英女子オープン。渋野は復調の兆しを見せたスコットランド女子オープンをきっかけにして、さらなる飛躍ができるのか。フォロースイングに注目しながら、その行方を見守っていきたい。
大本研太郎(おおもと・けんたろう)
1974年1月18日生まれ。18歳からゴルフを始め、研修生、ミニツアーを経験後、PGAティーチングプロA級取得。初心者からプロまで、個々のレベルや体のタイプに合わせたスイング解析やスイング改善などのレッスンに定評がある。藤田さいき、東浩子、臼井麗香など、多くの女子プロを指導。(株)スポーツラボ代表取締役。GPC恵比寿ヘッドコーチ。
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