イ・ボミの魅力と忘れられない日本女子プロ選手権での出来事 森口祐子プロ「その笑顔を見せてくれるだけでいいから現役を続けて」 (2ページ目)

  • 古屋雅章●取材・構成 text by Furuya Masaaki
  • photo by Kyodo News

 そして、翌2014年の女子プロ選手権。イ・ボミさんは連覇を目指していましたが、韓国で闘病中のお父様の容態が急変したことで、3日目のプレー途中で棄権しました。私は会場を出る時の彼女をクラブハウスの玄関で見ていたのですが、うなだれて車に乗り込んでいく姿は今でも忘れられません。

 お父様はイ・ボミさんが帰国してすぐにお亡くなりになったと聞きました。その際、失意のイ・ボミさんは、病床のお父様と「賞金女王になります」という約束を交わしたそうですね。

 実際、翌2015年、2016年には、その約束を見事に果たしました。そういったこともあって、2013年、2014年の女子プロ選手権は、とても印象に残っています。

 2年連続賞金女王となったあと、イ・ボミさんは2017年が23位、2018年が83位と、賞金ランキングの順位を一気に落としてしまいます。この当時、技術的にはショットに悩んでいたようですが、それがショートゲームにも波及。パッティングストロークでパターのヘッドがスムーズに出ない、イップスっぽい動きをしているのを何度か見ました。

 2011年から日本ツアーに参戦して、10年弱。その間、ずっと全力で走ってきて、おそらく気持ちがついてこなくなったのだろうなと思います。

 オールラウンダーのイ・ボミさんですが、特に飛距離の出るドローボールには定評がありました。スイングは、頭の軸をあまり動かさずに、左腕を伸ばして背中が十分に捻転された理想的なトップを作ります。そこから、よどみなくダウンスイングに入り、インパクトでわずかにツイストする動きが入ります。

 このツイストは、インパクトで上半身が右から左に回転するのに対し、下半身は左から右へ逆回転させることでクラブをビュンと走らせるというもの。彼女はこのスイングで、低スピンのドローボールで飛距離が出るドライバーショットを打っていました。

 人柄のよさは秀逸で、イ・ボミさんが嫌そうな顔をしたのを見たことがありません。今季限りで日本ツアーを引退する理由のひとつが、選手として成績を出せないことに悩んでいたと聞いて、「あなたは、その笑顔を見せてくれるだけでいいから(現役を)続けて」と、ファンと同じような気持ちにさせられましたけど、本人の気持ち的にはもはや限界だったのでしょう。

 残念ではありますが、彼女の残りのシーズンにエールを送りたいと思います。

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