賞金女王イ・ボミが「ゴルフはもうやめる」と言って涙した日 (3ページ目)

  • 金明昱●文 text by Kim Myung-Wook
  • photo by Getty Images

 今季は何度となく会心の笑顔を見せてきたイ・ボミ。一方で、涙を見せる機会も少なくはなかった。LPGAアワード2015の表彰式でも、各賞を受賞したあとのスピーチで感極まって涙した。

「(LPGAアワードでは)スピーチも事前に準備して、しっかりと覚えてきたのに、頭の中が真っ白になって、すべて忘れてしまいました。(BGMで)流れている音楽を聴いているうちに悲しくなってきたというか、今年1年の苦労や喜びを全部思い出してしまって……。それにやっぱり、亡くなった父が、この晴れの舞台にいないことが、すごく悲しかったです」

 周知のとおり、賞金女王の座を手にすることは、昨年他界した父ソクチュさんとかわした約束だった。ゆえにイ・ボミは、涙したスピーチでも「今日、この姿を(父に)見てもらいたかった」と言って、言葉を詰まらせた。

 2010年に韓国女子ツアーで賞金女王となったあと、2011年から日本ツアーに参戦し、5年目にして手にした念願のタイトル。昨年は、一時賞金ランクのトップに立ちながら、9月に父親が亡くなって、精神的に落ち込み、本来のプレーができずに逆転を許した。それだけに、ようやくつかんだ栄冠には喜びもひとしおだったが、その瞬間を分かち合いたかった父親がいないことは、やはりイ・ボミにとってはつらかった。いや、その晴れの姿を見せられなかったことが、悔しかったのかもしれない。

 しかし、いつまでも悲しんでばかりはいられない。イ・ボミは、故郷である韓国の京畿道水原にある父の墓前に手を合わせて、父との約束を果たしたことを報告すると、2016年シーズンの目標達成へ、新たな決意を誓った。

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