CL準々決勝バイエルン&レアル・マドリードの勝因は? 日本人選手決勝進出の夢消える (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【レアルに見るクラブとしての底力】

 この両チームは一昨季と昨季、CL準決勝で対戦している。一昨季は合計スコア6-5でレアル・マドリード、昨季は合計スコア5-1でマンチェスター・シティが勝利した。今季の戦いが近かったのは、レアル・マドリードがしぶとさと粘り腰で劣勢をものにした一昨季の戦いぶりだ。

 UEFAのデータによれば、この第2戦のボール支配率はマンチェスター・シティ64%対レアル・マドリード36%。シュート数は34対8で、枠内シュートは11対3の関係だった。

 ただし、レアル・マドリードはヘロヘロになりながら耐えていたわけではない。むしろ逞しく見えた。思い出したのはかつてのイタリアサッカーだ。

 欧州のある評論家はかつて筆者にこう語った。

「イタリアの選手はマイボール時より相手ボール時のほうが、生き生きと楽しそうにプレーしている」

 その言葉はイタリア人の名将、カルロ・アンチェロッティ率いるレアル・マドリードの各選手に完全に合致した。強かった頃のイタリアサッカーをレアル・マドリードに見た気がした。

 言い換えれば、相手にボールを奪われても、まったく落胆しないサッカーである。かつて筆者に、マイボール時も相手ボール時も同じ精神状態でプレーすることの重要性を説いたのは、フアン・マヌエル・リージョ(元ヴィッセル神戸監督)。サッカーの主役はボール。「ボールと共鳴するようにプレーすることが試合に勝つ近道だ」と述べていた。

 現在リージョが参謀コーチを務めているマンチェスター・シティの選手が、ボールと共鳴していなかったというつもりはないが、レアル・マドリードのほうがその点ではわずかに上回っていたように筆者には見えた。

 2連覇を狙うディフェンディングチャンピオンとチャレンジャーというお互いの立ち位置が、その差となって現れたと見る。チャレンジャーでありながら、レアル・マドリードはCL優勝最多の14回を数える、欧州サッカー界にあって断トツの名門クラブでもある。その鬼気迫る守備ぶりに、クラブとしての底力を見た気がする。

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