レアルも認めた中井卓大は何に苦しんでいるのか かつての五輪代表エース候補はいま (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

「レアル・マドリードで育った選手は王者の血を引く。たとえトップに定着できなくても、どのチームでも戦えるタフさがある」

 そんな定評があって、カスティージャ出身はひとつのブランドになっているのだが、中井は現時点でそんな"不屈さ"を見せられていない。

 カスティージャ出身では、中井にとってMFの先輩、23歳のアントニオ・ブランコはアラベス、22歳のセルヒオ・アリーバスはアルメリアと、それぞれ1部でレギュラーの座をつかんでいる。

 ほかにも、アルバロ・モラタ、マルコス・ジョレンテ(ともにアトレティコ・マドリード)、マルコス・アロンソ(バルセロナ)、ダニ・パレホ(ビジャレアル)、ボルハ・マジョラル(ヘタフェ)、ミゲル・グティエレス(ジローナ)、パブロ・サラビア(ウルバーハンプトン)、セルヒオ・レギロン(ブレントフォード)、ディエゴ・ジョレンテ(ローマ)など、市場価値の高い代表レベルが枚挙にいとまがない。

 逆説すれば、レアル・マドリードと9歳の時に契約してカテゴリーを駆け上がってきた中井も、同じDNA を持っているということだろう。

 カタールでU23アジアカップを戦わずとも、中井はすでにマーケットのなかにいる。リーグ終盤、マハダオンダでポジションを得て、チームを勝利に導くプレーができたら、運命は急転する。久保がレアル・ソシエダというクラブでフィットしたように、クラブのプレーコンセプトや状況次第で、大化けする可能性もある。

 中井の戦場はカタールではなく、スペインだ。

プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。

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