レアルも認めた中井卓大は何に苦しんでいるのか かつての五輪代表エース候補はいま (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【かつての柴崎岳に近いジレンマ】

 プロ入り以降、中井は苦しみ続けている。

 2年目の今シーズンも、カスティージャと同じ3部リーグのラージョ・マハダオンダに、1年間のレンタル移籍で新天地を求めたが、(4月12日現在)最下位に沈むチームで、定位置をつかめていない。14試合出場も、先発は4試合のみ。成績不振により昨年最後の試合で監督が交代するなど、チーム事情に情状酌量の余地もあるが......。

 なぜ、レアル・マドリードも認めた日本人MFは伸び悩んでいるのか?

「テクニックレベルは高い。しかしコンディションを含めて、フィジカル的にまだプロでは準備が不十分。プレーに波が出るだろう」

 去年の9月、スペインで現地取材をしていた時点で、マハダオンダ関係者から不安な声が漏れ聞こえていた。その証言を裏づけるように、リーグ序盤は終盤での起用が続き、その後は控えに回り、昨年12月ころにはスタメンを勝ち取ったかに見えたが、再びベンチを温めるようになった。

 ラウル、ジダン、アンチェロッティと、お歴々にスキルやビジョンは認められていただけに、そのセンスは間違いない。ただ、その技巧を高い強度で出せるか。プロではそこが問われる。今や久保が軽々とその試練をクリアしているだけに簡単に思えるが、過去には多くの日本人選手がその壁に阻まれてきたのだ。

 中井が直面しているジレンマは、かつて柴崎岳が挑み続けた壁に近い。

 ふたりとも、前を向いてボールを持てばファンタジスタと言える。しかしトップ下では接触強度が上がってしまい、持ち味を出せない。また、プレーメーカーではチームを動かす展開力を発揮するが、単純な守備で弱さが出る。そこで「サイドで起点に」となるが、サイドアタッカーには崩しのスピードが求められ、他の選択肢が上回る。結局、適切なポジションを探して彷徨うことになるのだ。

 現状、レアル・マドリードとは2025年6月まで契約が残るが、このままだと復帰は難しいだろう。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る