遠藤航が就いた日本人サッカー選手史上の最高位 リバプールだから可能だった出世劇 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【小野伸二、中田英寿と比べると...】

 そこからの挽回である。現在ではむしろ出場過多。次戦を考え、年齢を考えたとき、それは酷使ではないかと、逆にユルゲン・クロップ監督に文句を言いたくなるほどだ。

 現在の遠藤は、リバプールのアンカー=ワンボランチというポジションにスッポリときれいに収まっている状態だ。リバプール級のクラブはもちろん、もう少し下位クラブでも、いまや各ポジションにスタメン候補は複数いて、ターンオーバー制を敷くのが一般的だ。リバプールもほかのポジションにはそうした環境が用意されているが、アンカーは例外だ。現在、遠藤にこれといったライバルは見当たらない。これも珍しい話である。

 身長178センチは、欧州サッカー界においては小柄な部類に入る。それでいて、シュツットガルト時代、ブンデスリーガのデュエル王なる称号に輝いた過去があるが、理想をいえば、もう数センチ上背がほしいところだ。ポジションに求められる適性に必ずしもマッチしているわけではない。

 また、デュエル王とはいえ、それは文句なしのトップアンカーの看板とは言えない。ボールを奪うばかりが今日的なアンカー像ではないからだ。ゲームメーカー、司令塔の象徴だった10番系の選手が、半ばアタッカーと化したため、その司令塔的な役割も守備的MFに委ねられるようになっている。

 後方で構える司令塔。こうした今日のアンカー像に遠藤は最適な選手かと言われれば、ノーだろう。もうひと息だが、うまさに欠けた。

 日本はかつてうまい選手の宝庫だっただけによくわかる。小野伸二、中村俊輔、中田英寿、藤田俊哉、名波浩、遠藤保仁、中村憲剛......彼らと比較したとき、遠藤に足りない要素は鮮明になるだろう。

 実際、小野、中田、名波、遠藤保らは守備的MFでプレーしたこともある。低い位置で鮮やかな技巧を発揮した。そうした魅力に遠藤は決定的に欠ける。

 これまで日本人が海外で活躍する条件は技巧だった。それに日本人特有の俊敏性が加わり、やがてドリブル&フェイントに長けたウインガーの商品価値も高まっていった。中盤に好素材がひしめき「中盤大国」と言われた時代から、いつしか「ウイング大国」に切り替わった。現在はウイングこそが好素材が最もひしめき合うポジションになる。

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