スポーツ賭博は欧州でも蔓延 若手イタリア代表もギャンブル依存症を告白 (2ページ目)

  • 利根川晶子●文 text by Tonegawa Akiko

【トナーリは10カ月の出場停止】

 同時に、"イタリア版ガーシー"とも言えそうなファブリツィオ・コロナ(有名人にとって不都合な写真やネタで恐喝事件を起こしている)が、当局が名前を公表する前から、違法賭博に関与していると選手の名前を次々と挙げ、サッカー界は一時期、大騒ぎとなった(なかには無関係な者の名前もあった)。

 そのなかでも大物は、ふたりのイタリア代表、元ミランで現ニューカッスルのサンドロ・トナーリと元ローマで現アストン・ヴィラのニコロ・ザニオーロだ。捜査が行なわれたのはちょうどEURO2024予選の合宿中で、警察がふたりの事情聴取をするためコヴェルチャーノ(イタリア代表トレーニングセンター)を訪れる事態となった。彼らはともに次代のイタリアを担う選手だが、直後のマルタ戦とイングランド戦を欠場した。

 この件に関して言えば、事件性においては、これまでの賭博に絡む八百長スキャンダルとは異なる。イタリアサッカー協会では、選手が自分の所属するスポーツの分野で賭けをすることを禁止している。つまりサッカーはダメ、バスケットボールならOKというわけだ。焦点もそこに集まった。

 ファジョーリは違法サイトで賭けをしたことは認めたが、ユベントスに賭けたことはないと主張。一方、トナーリはミラン時代にミランの試合にかけたことがあったが、自分が出場していない試合に限っていたという。またザニオーロは、これまで違法サイトを利用したのはポーカーやブラックジャックのみだと主張し、「サッカーにはノータッチだった」と言う。

 結局、司法取引もしたことから、ファジョーリは7カ月、トナーリは10カ月の出場停止(本来なら3年だった)となり、ザニオーロは無罪放免となった。賭けをしたこと自体が罪に問われたのではなく、違法なプラットフォームを使ったことが処分の対象となった。

 事件発覚後、この3人は、自分たちがギャンブル依存症であることを明かしている。彼らには治療プログラムへの参加が義務づけられた。ファジョーリは300万ユーロ(約4億8000万円)の焦げつきを取り返すため、賭けを止められなくなってしまったという。胴元から「脚を折るぞ」という脅しも受けたそうだ。

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