橋岡大樹のプレミア移籍も実現 シント・トロイデンはいかにして日本に欠かせぬクラブとなったのか (3ページ目)

  • 中田 徹●取材・文 text by Nakata Toru

 そのことに加えてDMMが(チームの成績に)プレッシャーをかけてこないので、過度な投資をする必要もない。それは地元のファンも一緒。温度感が日本とベルギーで同じなんです。地元の人たちはシント・トロイデンが優勝争いするとは思っておらず、『中位で十分だ』とはっきり言いますからね」

── シント・トロイデン買収時、降格するのは1チームだけでしたから、2部落ちのリスクが非常に低かった。しかし現在は、2チームから3チームが降格するレギュレーションです。

「ちょっと怖いですよね。16チーム中3クラブが降格する可能性のある、本当に大変なリーグになってしまいました。ちょっと気を緩めたらシント・トロイデンも危ない。だから、今季の若返りは正直に言ってリスクでした。先ほどお話しした各クラブの過剰な投資も、この危機感から来るものだと思います」

── DFレイン・ファン・ヘルデン(21歳)、DFマッテ・スメット(20歳)、MFマティアス・デロージ(19歳)、MFヤルネ・ステウカ--ス(22歳)......アカデミーからの昇格勢が若返りの象徴です。

「トルステン・フィンク監督のおかげで、地元選手と日本人選手の融合もうまくいった。先日のファンミーティングでは『今季は大成功。残り試合でどうなろうともシント・トロイデンは成功』ってファンが言ってました(笑)。負けても今は『本当によくやった!』と拍手を贈ってくれるんですよ(取材時でシント・トロイデンはリーグ9位)」

── サポーターとの距離は?

「日本人選手を獲得したことによって、サポーターとの"最初の壁"が壊れました。冨安健洋、遠藤航、鎌田大地のプレーを見て、『やっぱり日本人選手はいいな』となりましたね。それが1年目。

 2年目(2019-20シーズン)は外国人選手にたくさん投資し、ケビン・マスカットを監督に招聘して勝負をかけたわけなんですが、日本的なサッカーがファンから受け入れられず、チームの成績も悪かったから大変でした。地元の選手がチームに全然いなかったことも大きかった。あの時期を振り返ると、正直言って『全員が敵』の状態でした。

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