久保建英は躍動もスペイン初戴冠ならず レアル・ソシエダはなぜ勝てなくなったのか (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【久保以外は補強に失敗】

 しかし筆者は一滴、毒をたらしたくなった。

「なぜ、(モハメド・)アリ・ショや(アルセン・)ザハリャンを獲得したのか?」

 その場は一瞬にして剣呑となった。

「なぜって? いい選手だろ?」

 当時、アンドニ・ゴロサベル、アレックス・ソラという下部組織スビエタの右サイドバックをともに放出し、新たにこのふたりを獲得した補強が「下策」と批判を浴びていた。そのため、センシティブになっていたのだろう。

「これから活躍するといいね」

 その場で議論をかわすよりも、その後の取材を円滑に進めたかったので、努めて明るく言ったものだ。

 ただしその後、アリ・ショは半ば戦力外となりフランスのニースに放出されることになった。ザハリャンも期待に応えるプレーには程遠く、先発したマジョルカ戦もケガでメンバー外となったアンデル・バレネチェアの"不在の在"を露呈させていた。それぞれフィジカルに優れていたり、止まったボールのキックがすばらしいなど、特長はあったが、サッカー選手としての成熟度が低すぎた。

 ここ2シーズン、久保の獲得こそ大ヒットだったが、ラ・レアルの補強は難しい局面を迎えている。なかでも昨シーズンのエースストライカーであるアレクサンダー・セルロートを引きとめられず、FW陣の強化はマイナス材料だ。

 カルロス・フェルナンデス、ウマル・サディク、アンドレ・シウバという3人のFWは"帯に短し、たすきに長し"。カルロス・フェルナンデスは単純にトップレベルで戦うほどの力を持っていなかった。サディクはパワーやスピードを生かした一発は規格外だが、ポストプレーなど連係面はユースレベル。アンドレ・シウバは現地で「ミステリー」と言われており、センス抜群で最適格のFWのはずだが、ケガもあって継続的に持ち味を出せていない。

 この緊急事態に、クラブも新たに動いてはいる。今年1月、ウニオン・ベルリンからシェラルド・ベッカーを獲得。国王杯準々決勝、セルタ戦でさっそくデビューゴールを決めている。スピードを用いる技術にも優れ、期待感は高まった。今回のマジョルカ戦でも交代出場で存在感を放っていた。だが......。

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