お金がなくても大丈夫!? 首位ジローナの予算はバルサの20分の1 岡崎慎司も指導した監督の手腕が光る (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【指揮官ミチェルの見事な采配】

 ミチェル監督が率いるジローナの強さの核心は、「選手が殻を破る姿」にある。日々のトレーニングの質の高さと、勝負における起用の正しさによって、選手たちが技巧的、戦術的な成長を示す。その繰り返しで、チーム自体が劇的に変身を遂げるのだ。

 世界的には無名に近かったFWドフビク、サビオ、ヴィクトル・ツィガンコフ、MFアレイシ・ガルシア、ミゲル・グティエレスの市場価値は跳ね上がっている。昨シーズン、「ラ・リーガ最高の右サイドバック」と絶賛されたアルナウ・マルティネスは今や定位置を失っているが、代わりのヤン・コウトは今やブラジル代表にも招集されるほどの台頭を見せる。

 これだけの競争力を作り出した指揮官の采配は見事だ。

 昨シーズン、司令塔だったオリオル・ロメウはシャビ・エルナンデスが率いるバルサに奪われたが、今やロメウは自信喪失し、「期待外れ」の烙印を押されている。一方、ジローナで新たに台頭したMFアレイシ・ガルシアはスペイン代表に招集され、バルサの獲得候補にもリストアップされたという。しかしミチェルはダブルボランチの編成を創出し、必ずしもアレイシ・ガルシアに頼っていない。

 その変幻自在こそ、いわゆるビッグネームがひとりもいないジローナ快進撃の理由と言える。

 もっとも、ローマは一日にして成らず、である。

 2017年夏、ジローナはシティ・フットボール・グループの傘下に入っている。マンチェスター・シティを率いるジョゼップ・グアルディオラ監督の兄、ペレ・グアルディオラが幹部。スペイン代表にも選ばれたアレイシ・ガルシアを筆頭に、サビオやコウトもグループの契約選手で、クラブのスタイル確立、スカウティングや選手補強に関し、大きな転機になったと言える。

 ただしジローナはもともと、欧州王者シティに近い色合いを持っていた。

 2014年からスポーツディレクター(SD)を務めるキケ・カルセルは、バルサの下部組織ラ・マシア育ちである。トップデビューはできなかったが、ヨハン・クライフの理念を強く受け継ぎ、ボールゲームを重んじてきた。SDとして下部リーグで実績を積みながら、ジローナでそれを花開かせたのだ。

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