エムバペは「移籍するする詐欺」? レアル移籍騒動の下に隠れている思惑の数々 (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【PSGなら好きなことができる】

 ただし母親側が、PSGもしくは他のチームが設定するエムバペの値段を吊り上げるためにやった可能性もある。ファイザ・ラマリはエムバペのここ3年間の「移籍するする詐欺」の張本人だ。2022年の6月、エムバペは限りなくレアル・マドリードへの移籍が近いとされていた。しかし、ファイザ・ラマリはフランス大統領エマニュエル・マクロンに「息子はフランスの宝だから、国外のチームにやってはならない」と吹き込み、大統領に「エムバペがフランス以外のクラブでプレーするのは恥だ」と発言させた。

 彼女の目的はただひとつ、各チームを競わせて、1ユーロでも多くの金を引き出すことにある。今回もレアルに大金でオファーさせ、PSGもしくは他のチームと天秤にかけるつもりだろう。

 ただ、フランスの記者の大多数は、それでもエムバペはパリに残ると見ている。

 リオネル・メッシもネイマールも去ったPSGには、今やエムバペしかいない。エムバペがいなければ、PSGはただの普通のチームに戻ってしまうのだ。エムバペ側の希望を飲むしかない。

 ルイス・エンリケは優秀な監督だ。そして彼には野望がある。去年の夏はメッシとネイマールの去就に振り回されていい補強ができなかったが、今年の夏は違う。エムバペが望む、エムバペと合う、エムバペが輝くための選手を獲得することができる。とにかく金はあるのだ。ネイマールとメッシは世界最高の選手だが、エムバペが望む選手ではなかった。

 一方のエムバペも、PSGでは自分の意見を取り入れたチーム作りがなされ、彼は王様のようにふるまえる。レアル・マドリードではこうはいかない。彼にとって居心地がいいのは紛れもなくPSGだろう。

 元フランス代表でPSGの監督も務めたルイス・フェルナンデスはこう言っている。

「現在、キリアンはPSGで好きなことができる。チームは彼のためにプレーする。おまけにルイス・エンリケは世界で最高の監督のひとりだ。これで出て行くならバカだ」

 しかし同時に、私は思う。ゴールデンボーイだったエムバペももう25歳。そろそろ大きなタイトルが欲しい頃だろう。CLを制するのに、PSGではあと何年かかるかわからない。昨年夏には「このチームでは難しい」とエムバペ自身も言っている。

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