「久保建英はラ・レアルにおける魔法だ」スペイン人記者がアジア杯での不在に嘆き「その影響力はゴールやアシストの枠を超えている」 (2ページ目)

  • ロベルト・ラマホ●取材・文 text by Roberto Ramajo

【9試合も欠場するのは深刻】

 アジアカップがカタールで1月に実施される理由はわかっている。しかし、歴史的にこのスポーツを牽引してきたヨーロッパのシーズン中に、前回のワールドカップとは違い、欧州各国のリーグ戦を中断せずに大会を開催するというすばらしいアイディアを思いついた聡明な人物のことを私はまったく理解できない。

 この件については日本代表に合流する前、久保も不満を言葉にしていた。

「リーグ戦の最中にアジアカップが開催されるのは残念なことだ。僕に給料を払ってくれているのはもちろんラ・レアル(レアル・ソシエダの愛称)だけど、もしメンバーに招集されたら参加する義務がある。そのため僕は行かなければならないし、そう言わざるを得ない。ラ・レアルには申し訳ないと思っているが、母国を代表してアジアカップに参加できるのが本当にすばらしいことなのも事実だ。それが現実なので、僕はできる限り大会を楽しむつもりだよ」

 ラ・レアルが今回、スター選手を失うという問題の根底にあるのは、私たちが久保の去就に感じているのと同じ懸念である。

 彼はチーム状態が良くない時に攻撃を牽引し、チームのなかで最も想像力に富み、最も大きな違いを生み出し、最も予測不可能な選手だ。久保はイマノル監督にとって大きな存在であり、彼がいないチームからは多くのものが失われることになる。この問題は深刻だ。

 我々は今、真剣に久保の離脱を不安視している。というのもすべてが順調に進み、日本代表が決勝進出を果たし、ラ・レアルが国王杯を勝ち抜いた場合、久保は公式戦9試合を欠場することになるからだ。

 私には、ラ・リーガと国王杯の厳しい戦いを交互に凌いでいくのは至難の業に思える。その理由として第一に、必要なローテーションを組むための選手層が薄くなること、そして第二に、客観的に見て久保不在のラ・レアルの攻撃力が今よりも低下することが挙げられる。

 久保の数字が最近伸び悩んでいるとはいえ、彼がラ・レアルに与える影響力は、ゴールやアシストという枠をはるかに超えている。久保は非常に難しいことをいとも簡単にやってのけている。そのため対戦相手は彼をより警戒する必要があり、それによってチームメイトが自由に生かせるスペースが生み出されているのだ。それは久保の新しい価値と言えるだろう。

 久保は大きく進化し、多くのチャンスを生み出しているため、たとえそれが成功に終わらなくとも、対戦相手は彼を止めるためにより多くの選手を費やさなければならない。久保はイマノル監督率いるラ・レアルにおける"魔法"であり、チームはそれを今月欠くことになる。

 論理的に考えた場合、久保が常に隠し持っているサプライズ的な要素がなくなれば、アスレティック・ビルバオ(1月13日に対戦)や驚異的な結果を残しているジローナ(2月4日に対戦)のようなライバルを打ち負かすのははるかに難しくなるだろう。

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