2023サッカー界7大ニュースをブラジル人記者が選ぶ 「チーム史上最高のファウル」やメッシ、なでしこ、サウジアラビアの話題など (3ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【SNSで拡散した面白プレー】

●バロンドールはメッシ?

 忘れてはいけないのは、リオネル・メッシの8度目のバロンドールの受賞だ。もちろん史上最多。2位のクリスティアーノ・ロナウドが5回、ヨハン・クライフ、ミシェル・プラティニ、マルコ・ファン・バステンでさえ3回だ。でも、どこかおかしい。

 メッシが世界有数の選手であるのは疑いようもない。彼はブラジル人の私に、アルゼンチンを応援させた唯一の選手でもある。そのキャリアに対する賞であるなら、十分それに値するだろう。だが、バロンドールはあくまでも年間最優秀選手に与えられるもの。2023年のサッカー界には、世界の頂点とは言えないMLSのインテル・マイアミでプレーする36歳のメッシ以上の選手はいなかったのだろうか。彼よりずっとビッグなクラブでプレーするアーリング・ハーランドも、モハメド・サラーも、ケヴィン・デ・ブライネも彼より下だったのか。ヨーロッパの主要リーグでプレーする選手以外でバロンドールを勝ち取ったのはメッシが初めてだ。

 今回の受賞はもちろん、昨年末のアルゼンチン優勝に起因するのだろう。カップを掲げるメッシの姿は多くが待ち望んでいたものだった。だが、今回のバロンドールは厳密にはカタールW杯は関係ない。それは昨年の出来事だ。そしてたとえカタールW杯を入れたとしても、メッシはW杯で絶対的なベストプレーヤーではなかった。ルカ・モドリッチやキリアン・エムバペのパフォーマンスがメッシ以下だったとは思えないのだ。
 
●最も笑いをとったプレー

 2023年のサッカー界で笑いをとったといえば、イングランド2部のサンダーランドでプレーするMFルーク・オニエンだ。彼は今年、イングランドで最も人気のある選手のひとりにになった。だが、それはゴールや見事なアシストのおかげではない。ただ、ピッチ上で誰もしないようなことをやってのけたのだ。

 今年2月、サンダーランドはブリストル・シティ戦で1-1と引き分けた。試合終了近く、相手のアレックス・スコットがカウンターで上がろうとする。チームの絶体絶命のピンチに、後ろから追いかけたオニエンは相手を倒すでもなく、ユニフォームを引っ張るでもなく、結果的にスコットの背中に飛び乗った。オニエンをおんぶした形になったスコットはあまりのことに思わず足を止める。これにはスタジアムも大爆笑。オニエンにはイエローカードが出されたが、「チーム史上最高のファウル」と言われ、SNSで世界中に拡散された。

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