谷晃生「試合に出なくても学べているからいい、とは思えない」ベルギーでの厳しい現状や葛藤を明かす (2ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text&photo by Takamura Misa

 思えば今シーズン、デンデルへの期限付き移籍を決断する直前には、ガンバ大阪でも思うように試合に絡めない状況に置かれていた谷だが、その時以上の危機感を覚えているとも言葉を続ける。

「ガンバ時代は、J1リーグの開幕戦からチャンスをもらっていたにも関わらず、自分が結果を残せずに出場機会を失いましたが、こっちでは練習試合も控えGKふたりで常に45分ずつだし、どのチームもそうであるように、GKはフィールド選手と違って途中出場するチャンスはほぼないですからね。この先、自分が置かれている状況が劇的に変わる可能性はそう高くはないのかなとは覚悟しています。

 ただ、まだまだ自分にやれることはあるはずだし、今試合に出ていなくても2〜3年後に出ていたら、それが正解と言われる世界だと考えれば、今試合に出ていないことがすべて悪とは言いきれないというか。実際、ここまで話してきたように、デンデルに来たから得られていることもある。

 でも一方で、サッカー界において試合に出ない限りはステップアップを図れないのは事実で......。冷静に、湘南ベルマーレで1年間に30〜40試合を戦っていた3年間と、今年1年を比べても、プロサッカー選手として、新しい環境に飛び込んで新しい発見ができてOK、日々の生活を通して人としていろんな成長を見出せているからOKと、納得するのは違うな、と。

 W杯まであと2年半しかないということ考えても、置かれている現状と、自分の将来ということのふたつは常に自分のなかで戦わせて、キャリアを考えていかなければいけないと思っています」

 いずれにせよ、この状況に真正面から向き合い、考えることには「意味がある」と谷は言う。"今"を懸命に過ごす先にしか将来はないと考えているからだ。

「周りからは、まだ加入して半年では何もわからないだろうと言われることもあるし、それも一理あるとは思います。でもだからといって、1年、2年と経てば答えがあるのかと言えば、そんな保証もない。

 だからこそ、大事なのは、いろんなことを時間軸で考えず、先を見すぎずに、その時々で肌身で感じたいろんなことをしっかりと自分のなかで噛み砕いて、どう行動に移していくか。それを、自分自身が正解にしていくかだと思っています」

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