久保建英は登場で試合を一変 冨安健洋は断トツの出来栄え CLベスト16に日本人3人 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【風格さえ感じさせた久保建英】

 セルティックと同じE組で戦うフェイエノールトは、アトレティコをホームに迎えた。この試合に敗れると脱落が決まるフェイエノールトは、前半を0-1で折り返すと、非常手段に打って出た。後半の頭から上田を投入。アルネ・スロット監督は布陣を4-2-3-1から4-4-2に変え、それまで1トップを張っていたエース、サンティアゴ・ヒメネス(メキシコ代表)と上田を前線に並べた。

 後半14分、CBゲルノト・トラウナー(オーストリア代表)の縦パスをナウエル・モリーナ(アルゼンチン代表)のマークを外しながら受けた上田は、巧みなトラップから左足シュートに持ち込んだ。右ポストをシュートはわずかに外れたが、CLのレベルに達した上等なプレーだった。

 上田の問題は、通常の4-2-3-1を組む場合、1トップを張るヒメネスがうますぎることだ。フェイエノールトのレベルを超えた大物とポジションを争う恰好になっている。出場がもっぱら途中出場に限られる理由だ。日本代表の1トップとメキシコ代表の1トップとの間に大きな差があるというこの現実には、いささかショックを覚えずにはいられない。

 上田に多機能性があれば、ウイング兼ストライカーとして選択肢は広がるが、4-2-3-1あるいは4-3-3上で1トップしかできないとなると、ライバルの存在は大きくなる。ヒメネスが上位クラブに買われていくのを待つか、上田が出場機会を求めて移籍するか。

 前節、ベスト16入りを決めていたレアル・ソシエダは、ザルツブルクとの一戦に、若干メンバーを落とし、久保をスタメンで起用しなかった。出場したのは0-0で迎えた後半29分だった。それまでスコアどおりの競った内容の試合は、久保の登場で一変。真打ちが登場したような感じでレアル・ソシエダの一方的なペースになった。ボールは右のライン際に開いて構える久保の下に再三再四、よく集まった。風格さえ感じる、まさに絵になるそのウイングプレーを堪能するにはもってこいの展開になった。

 後半アディショナルタイムには鮮やかな弧を描くFK弾も放っている。GKアレクサンダー・シュラガー(オーストリア代表)の美技に遭い、ゴールこそ逃したが、これまた絵になるワンシーンだった。出場時間が短かったので割り引いて考えても、採点で7は出せる活躍だった。

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