三笘薫のシャビに通じる「方向性のよさ」を再認識 日本代表でも発揮できるか (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【伊藤洋輝との関係は?】

 日本代表のウルグアイ戦、ペルー戦、ドイツ戦で、三笘と左サイドで縦に並んで構えた選手は伊藤洋輝(シュツットガルト)だった。しかし、これまで伊藤は三笘との関係でエストゥピニャン役を果たすことができたとは言えない。シェフィールド戦に左SBとして出場したイゴール・ジュリオ同様、後方待機が目立った。左ウイングと左SBは濃密な関係を築くことができなかった。森保ジャパンのわかりやすい改善点である。

 シェフィールド戦の三笘は、最後までキレのいい動きを見せた。後半35分と43分にも自慢のドリブルでホームの観衆を沸かせた。

 そこであらためて目に留まったのが方向性のよさになる。進むべき方向に間違いがないのだ。その昔、バルセロナの記者が、シャビ・エルナンデス(現バルサ監督)のことを「大海原を越える航海士のようだ」と称していたことを思い出す。舵の切り方、つまりボールを持ち出す方向に間違いがないのだ、と。ポジションは異なるが三笘にも同じ特徴がある。

 後半43分のシーンでは、前方に三笘の進路を阻止しようと、相手守備者が最低2人構えていた。だが三笘は彼らに挑んでいきながらも、その逆を突いた。ボール(下)を見ないでドリブルするという操作ができるからだ。対峙する選手の逆を取るだけではない。その先を見通す目も備えているので、ディフェンス陣全体の陣形の逆を取る動きができるのだ。

 味方は逆に呼吸を合わせやすい。三笘のドリブルはパスワークと良好な関係にある。その昔、前園真聖がドリブルを始めると、周囲の味方選手が思わず見入ってしまうことがあった。よくも悪くも我が道を行くドリブルに周りの選手は困惑させられた。香川真司も似たような傾向を示すところがあったが、少なくともブライトンの三笘は常時、周囲との三角形を意識しながらドリブルに及んでいる。周囲の気配を察知する能力に長けている。ケレンミがないというか臭みがないというか、理詰めで無理がない。視野が広くドリブルとパスの使い分けがうまいのだ。

 日本代表でこの本領が発揮される日は訪れるのか。とりあえず左SBとのコンビネーションに目を凝らしたい。

久保建英や鎌田大地、三笘薫など日本人選手の活躍にも期待!
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プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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