久保建英、終盤にスイッチオンで勝利に貢献 厳しい評価&過酷日程を乗り越えられるか (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【10分で試合をひっくり返した】

 ラ・レアル陣営は76分、下がってボールを受けることでゲームを作り直そうとしたが、バックラインからボールが入ってこない。結果的にプレスをはめられてしまい、GKがやや苦しい体勢でボールを久保に縦パスを打ち込む形になった。わずかに久保のコントロールがずれたところ、背後から突かれてしまい、それが失点につながってしまった。

 しかし、ここから久保が真価を発揮する。85分、自陣からのカウンター、久保がボールの勢いを殺さずに前に運ぶと、鮮やかなパスを左サイドへ展開。シュートには至らなかったが、この攻撃で気配が変わる。

 87分、久保は右サイドで3人もの敵を引きつけ、メリーノにパスを入れると、これが右のアマリ・トラオレにつながり、クロスが際どいシーンになった。それで得た左CK、久保が左足で蹴り入れると、巻くような回転のボールでゴール前に混乱を呼び、相手ハンドを誘う。これがVARの末にPKになって、カルロス・フェルナンデスが蹴り込み、逆転に成功した。

 アディショナルタイムに入った94分にも、久保は左CKで鋭いボールをニアに合わせ、方向が変わったボールをファーでマルティン・スビメンディが押し込んでいる。狙撃手のような精度のボールだった。ほとんど10分で試合をひっくり返した。

 96分、久保はスイッチがオンになっていたのだろう。別人のようだった。カバーがいるディフェンスを相手にしても、得意とする緩急の変化のドリブルで抜き去り、味方とパス交換をしながらリターンを受けると、今度は縦に切り込んで右クロスを折り返している。周りと協調するプレーができれば、少々疲労を引きずっていたとしても、やはり脅威になる。1-3の勝利は必然だった。

 連戦が続く久保は体が重いのだろう。ハイレベルな試合が続き、毎試合、トップパフォーマンスが求められる。心身ともにぎりぎりの状態を迫られる。事実、筋肉にハリは出ているようだし、精神的ストレスも相当なものだ。

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