久保建英の移籍報道が過熱する理由 ただしソシエダ→マドリードには数々の失敗例も (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【成功例はシャビ・アロンソ】

 各クラブにはスカウトに殉じる関係者が数多くいる。そこに代理人も暗躍するだけに(直接の代理人だけでなく、代理人に近づく代理人もいる)、噂はリークも含めて、無限に噴き出す。そもそもスカウトはシーズン中も常に人材を物色するのが仕事で、補強選手のリストを日々更新している。ただし、ほとんどは契約に直結しない。

 久保移籍の話題を提供しているのはマドリードの専門サイトが中心で、現状、大手メディアは移籍報道にそこまで積極的ではないのが現状だ。

 久保の契約状況について言えば、ラ・レアルと2027年6月末までの期間になっている。移籍違約金は6000万ユーロ(約96億円)に設定。ビッグクラブにとっては手の届かない金額ではない。しかも古巣レアル・マドリードはその移籍金の半分を譲渡される契約。つまり彼らは"たった"3000万ユーロで獲得が可能で、それが噂の絶えない理由になっている。

「久保がこの活躍を続ければ、いつかは出て行くだろう」

 現地で取材した折、ラ・レアルのレジェンドと言われる元選手やクラブ関係者も、そう洩らしていたほどだ。しかし現在の久保は、グループリーグ首位のCLに集中している。ラ・レアルという理想に近いクラブを、ようやく見つけた。地力を蓄えるのがベストだろう。

 過去10年、若くしてラ・レアルでブレイクし、レアル・マドリードに移籍した選手は少なくない。アシエル・イジャラメンディ、アルバロ・オドリオソラ、マルティン・ウーデゴール。彼らはすばらしいシーズンを送った後、マドリードに新天地を求めたが、いずれも本領を発揮することはできなかった。1シーズン程度の活躍では、レアル・マドリードで安定的に力を出すことはできなかったのだ。

 一方、シャビ・アロンソはラ・レアルで3シーズン主力を務め、ラ・リーガ2位、CLベスト16という結果を残し、リバプールを経由した後、レアル・マドリード移籍で華々しい活躍を遂げた。当時のプレミアリーグはスペイン、イタリアに追いついてきた程度で、今のように世界最高峰のリーグではなかった。彼はひとつひとつ、階段を上ったのだ。

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