三笘薫の「ほぼ先制弾」で息を吹き返したブライトン 反撃の予兆は90年代のアヤックスを彷彿させる (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【期待を裏切ったアヤックス】

 監督としてバルセロナを初めて欧州一に導いたヨハン・クライフの出身クラブとしても知られている。先述の3連覇はクライフが選手時代に達成した快挙である。当時の監督で、その後、バルサの監督を務めたリナス・ミヘルスが唱えたトータルフットボールは、近代サッカー史において、プレッシングフットボールと並ぶ2大発明と位置づけられている。

 アヤックスととともに、代表チームで言うなら1974年西ドイツW杯で準優勝したオランダ。現代のサッカーをクライフなしに語ることはできない。

 ミヘルスの弟子をクライフとするならば、クライフの弟子はマンチェスター・シティの現監督、ジュゼップ・グアルディオラだ。アヤックスとマンチェスター・シティはすなわち親戚関係のようなものだ。

 マンチェスター・シティと、ロベルト・デ・ゼルビ監督率いるブライトンもサッカー的にずいぶん近しい、兄弟のような関係に見える。両者は5日前に行なわれたプレミアリーグで直接対決していて、マンチェスター・シティが2-1で勝利を収めていた。

 それを受けてのアヤックス戦である。つまりブライトンにとってアヤックスは、ルーツ的には大先輩にあたるチームだ。両者が抽選で同じ組になると、その直接対決は欧州サッカー史に刻まれる一戦になるかと思われた。

 ところが、期待されたこの一戦は、62対38というUEFA発表のボール支配率が示すように、ブライトンの一方的な試合になった。アヤックスは現在国内リーグで7戦して1勝2分4敗。暫定順位17位と不振に喘いでいる。おそらく、チームは結成以来、最悪の状態ではないだろうか。

アヤックス戦にフル出場、勝利に貢献した三笘薫(ブライトン)photo by AFLOアヤックス戦にフル出場、勝利に貢献した三笘薫(ブライトン)photo by AFLOこの記事に関連する写真を見る 結果は2-0。三笘薫は前半42分、先制点に思いきり絡んだ。CBルイス・ダンクの縦パスを対峙する相手右サイドバックの内側で受けると、カバーに来たセンターバックに対し、縦に出ると見せかけ細かなステップを踏み方向転換。低い弾道のインステップシュートに持ち込んだ。

 相手GKが辛うじてセーブしたそのこぼれ球を、1トップ下として先発したジョアン・ペドロは押し込むだけだった。ほぼ三笘のゴール。身贔屓を承知で言えばそうなる。

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