鎌田大地の「飛躍の時はもう少し先になる」理由 ラツィオ番記者が指摘する指揮官の流儀 (3ページ目)

  • フランチェスコ・ピエトレッラ●文 text by Francesco Pietrella(『ラ・ガゼッタ・デロ・スポルト』)
  • 利根川晶子●訳 translation by Tonegawa Akiko

【ファンの気持ちは冷めていない】

 鎌田には、そのゴール数をラツィオにもたらす使命がある。サッリが彼に求めているのは「新しいミリンコヴィッチ」ではない。ミリンコヴィッチがラツィオに保証してきたゴール数をチームにもたらすことだ。フィジカルの後継者なら、グエンドゥージがいる。しかし、ゴールの後継者は鎌田だ。

 鎌田自身の過去を見ても、結果を出すまでには多少の忍耐を要することがわかる。フランクフルトでも、鎌田がその素質を発揮するまでには時間がかかった。シント・トロイデンへレンタル移籍する前のフランクフルトでの最初の1年は、わずか4試合の出場でシーズンを終えている。しかしベルギーから戻りレギュラーとなった最初の本格的な1年目(2019-20)はヨーロッパリーグ(EL)で活躍。プレーオフのザルツブルク戦でのハットトリックは有名だし、アーセナル戦での2得点もすばらしかった。

 ラツィアーレ(ラツィオファン)の多くは彼を気に入っている。トリノ戦、モンツァ戦の不出場も、彼らの鎌田の期待を削いではいない。ミリンコヴィッチの後継者ではあるが、彼とは全く違うタイプの、東の国からやって来たプレーヤーへの好奇心と、彼を応援する気持ちはいまだ冷めることがない。

 SNSのコメントを読んだり地元ローマのラジオを聞いたりしていると、サポーターたちは鎌田にもっと彼らしい個性をプレーで発揮してほしいと思っているようだ。デュエルでの強さ、見事なスルーパス、そして決定力など、鎌田らしいプレーを見せてほしいと思っている。

 選手の評価というものは、ピッチでのパフォーマンだけではない。データも非常に重要であり、この世界では選手の過去の数字や統計を見て契約を決めるチームも少なくない(ミランなどがまさにそうだ)。その点でいうと、これまでの鎌田のデータは興味深い。

 ミラン戦までのリーグ戦出場時間316分で、走行距離ではチームで9番目だ。パスのパス成功率は87%をキープし、そのうち重要なパスとなったのは6。フェリペ・アンデルソン、ルイス・アルベルト、マッティア・ザッカーニだけが、それよりも高い成功率を保っている。要するに、鎌田は自分の道を順調に切り開いていっていると言っていい。

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